“目標や野心に囚われすぎると、幸せを逃すこともある”
ーーあなたの作品は音楽も印象的です。作曲家にもこだわりがありそうですね。
「私は毎回、作品に合わせた作曲家を探すことに多くの時間を費やします。たとえば『ロイヤル・アフェア』は王室を描くので、ガブリエル・ヤレドが最適だと考えました。『イングリッシュ・ペイシェント』などを手掛けた大御所ですが、デンマークには彼のような作曲家はいません。今回お願いしたダン・ローマーも、アメリカの有名な作曲家です。すべての映画は、それぞれ異なる“音楽体験”でもあるので、私は同じ作曲家と何度も組む可能性が低いのです」
ーー『ダークタワー』では監督としてハリウッドでの仕事も経験しましたが、今後ハリウッドとの関係は?
「『愛を耕すひと』もアメリカでは高評価を得たので、ハリウッドとの関係は良好です。ただ正直に言うと、デンマークで映画を撮ることのほうが好きです。表現の自由が大きいからでしょう。ハリウッド作品では“雇われている”感覚が強く、作品に関して多くの指示を受け入れなくてはならない。もしハリウッドに戻るなら、メジャースタジオではなく、自分でコントロールできるインディペンデントの映画を監督したいです。『愛を耕すひと』も『ロイヤル・アフェア』も、デンマーク映画にしては製作費が高めです。歴史を再現するのでお金がかかるからですが、ハリウッドに比べれば低予算と言っていいでしょう」
ーーでは最後に『愛を耕すひと』が、今を生きるわれわれに何を伝える作品なのかを聞かせてください。
「いくつかのメッセージを見つけられます。富める者と、そうでない者の対立。自分の権利を守るために闘うことなど社会的テーマもありますが、最も重要なのは個人の内面に訴えるものです。人生において目標や野心に囚われすぎると、幸せを逃すこともある。そこに執着するあまり、自分の周りにある大切な何かに気づかないルドヴィの運命から、ぜひ何かメッセージを受け取ってください」
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『愛を耕すひと』
2025年2月14日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
配給:スターキャット、ハピネットファントム・スタジオ
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