鑑賞する際に覚えておきたいキーワード
マンチキン国
可愛らしいカラフルな家々が立ち並ぶ、農業がメインの国。チューリップが咲き誇る国でここに住む人達は小柄なのが特長のひとつ。
キアモ・コ
オズの国の西側にある土地にある城。汚名を着せられて逃げ出したエルファバが、身を寄せた場所で、後にエルファバが溶けて消えた地でもある。
シズ大学

魔法の国オズで学問の最高峰として君臨する大学。学生寮を有しており、エルファバやグリンダら多くの生徒たちがここに住んでいる。
エメラルドシティ

オズの国の大都会でオズの国民の憧れの都市でもある。様々な人種にあふれており、どこを観ても魅力的。オズが住む巨大王宮もこの都市の中にある。
エメラルドシティ急行

シズ大学からエメラルドシティに向かう際にエルファバらが乗り込む長距離列車。前面展望席となっているので、走行感が気持ちいい。
「ウィキッド」HISTORY
『ウィキッド ふたりの魔女』のはじまりは、L・フランク・ボームが1900年に発表した小説「オズの魔法使い」に遡る。この小説は1939年にジュディ・ガーランド主演で『オズの魔法使』として映画化されてアカデミー賞子役特別賞を受賞。主人公ドロシーの現実は白黒映像で、オズの国に着いた途端に鮮やかなカラーになるなど、当時としては斬新な発想でファンタジーの世界を表現した名作として有名だ。小説刊行から100年近く時を経た1995年、グレゴリー・マグワイアがボームの世界観を題材に「ウィキッド 誰も知らない、もう一つのオズの物語」を発表。「オズの魔法使い」自体、アメリカでは誰もが知っている名作だっただけに「ウィキッド」も瞬く間にベストセラーとなった。

1900年に発表された「オズの魔法使い」
ライマン・フランク・ボーム著、河野万里子(訳)(新潮社刊)

1939年、ジュディ・ガーランド主演で公開された『オズの魔法使』
Photo by Silver Screen Collection/Hulton Archive/Getty Images
「オズと魔女たちにまつわる秘話を描いた面白い小説がある」。ブロードウェイの作詞・作曲家スティーヴン・シュワルツは友人からその話を聞き、「ウィキッド」を読んでミュージカル化への興味を掻き立てられた。実は、その時点で「ウィキッド」の映画化の話は進んでいたが、映画のプロデューサーで、のちに舞台も手がけるマーク・プラットは何かが足りないと感じていたという。そんな中、シュワルツからアイデアを聞き、ミュージカル形式がこの物語を表現するのにふさわしいと思い、舞台化実現へと動き出す。


1995年に発表された「ウィキッドーー誰も知らない、もう一つのオズの物語(上・下)」
グレゴリー・マグワイア著、市ノ瀬 美麗(訳)(早川書房)
2003年6月にサンフランシスコでトライアウト公演(ブロードウェイ上演を目指した試演)が開幕。1幕ラスト、エルファバが大ナンバー「Defying Gravity」を熱唱した後、感動と興奮で包まれた劇場の空気は忘れられない。同年10月ブロードウェイで幕が開き、以来2025年2月まで8249回を上演、昨年のホリデーウィークにはトップのチケットセールスを記録。日本でも劇団四季が2007年に初演してから再演希望NO.1作品と言われ、2023年にスタートした再演もチケット争奪戦が話題となった。

ブロードウェイミュージカル「ウィキッド」初演キャストの、エルファバ役、イディナ・メンゼル(右)とグリンダ役、クリスティン・チェノウェス(左)
Photo by Bruce Glikas/FilmMagic
「ウィキッド」がここまで愛される理由は、心を鷲掴みにされる楽曲の力はもちろん、普遍的なテーマの強さがあるから。グリンダとエルファバという対照的な2人が心を通わせ、それぞれの道へと進む“等身大の青春物語”は、ブロードウェイ開幕時よりティーンエイジャーの女性たちから圧倒的な支持を得てきた。オズという国の設定には絶対的な権力者が何をもたらすか、外見などに対する差別、世間の評判はまやかしが多いことなど、今の世界と重なるテーマが潜んでいる。それをファンタジーに包んだ物語に共感せずにはいられないのだ。
(文・宇田 夏苗)
『ウィキッド ふたりの魔女』
2025年3月7日(金)公開
アメリカ/2024/2時間41分/配給:東宝東和
監督:ジョン・M・チュウ
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム
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