一咲の感情のラインが途切れないように物語を作っていく
──原作は2023年にアニメ化もされた はつはる先生による人気コミックです。お読みになっていかがでしたか。
原作の“少女マンガが極道の世界を描いている”というギャップが面白かったですね。キュンとする感じは初めてでしたが、不思議な感覚でした。今回、初めてそういう気持ちを意識して作ることになり、プロデューサーの小池祐里佳さんに話を聞いて、いろいろ学習しました。
──脚本には原作のセリフが丁寧に取り入れられていました。脚本開発はいかがでしたか。
はつはる先生が監修で入ってくださったので、原作の世界観に関しては心配していませんでした。ただ、一咲にとって啓弥への恋心の寸止めが続くので、一咲の感情のラインが途切れないように物語を作っていくのには苦労しました。

──原作は完結していませんが、その点はいかがですか。
どこで終わらせるかという点では、2人の気持ちに一区切りつくところが第一段階と考えれば、悩むことはありませんでした。
──監督は一咲と啓弥をどのようなキャラクターとして、とらえていましたか。
一咲に対して初めは内向的なイメージがありましたが、原作を読み込んでいくと芯があって,実は強い女の子ではないかということが見えてきていましたね。
啓弥については、極道としての立ち居振る舞いがものすごくカッコいいというイメージがあって、しかもカッコいいだけでなく、孤独な感じもある。切ない雰囲気を漂わせながら、現代の陽気さも併せ持っている。そんなイメージでした。

──啓弥は武闘派として腕が立つだけでなく、料理の腕もなかなかのようですね。
啓弥は一咲にはとにかく過保護。料理は一咲にちゃんとした食事を摂らせるために必要で、本人が率先してやっています。ひょっとしたらボタン付けなどの裁縫もできるのかもしれません。ただ、それ以外は興味がない。勉強に関しては、自分は学校に行かなくなっていますし、極道の世界に入っていますから、必要なかったのではと思います。