ハビエル・バルデム「あの現場にいることでのプレッシャーもあったが、同時にその世界を間近で内面から見られるという贅沢もあった」
――実際のF1®サーキットでの撮影はいかがでしたか。興奮しましたか。実際のF1®サーキットで、しかもレースの最中に撮影されたシーンもあります。撮りなおしのできない“一発勝負”の撮影も多かったと思いますが、緊張感とはどのように付き合いましたか。
ケリー「私たちは多くの準備をした。ジョー(ジョセフ・コシンスキー監督)は準備とリハーサルをとても重視していて、私のシーンも、ピットウォールでの他の役者たちとの共演シーンも、何度もリハーサルした。
なので、本番になったときには、確かにプレッシャーはあったものの、アドレナリンによるワクワク感覚のプレッシャーだった。それは恐怖からのではなく。
私が特に気にしていたのは、実際のF1®レースに迷惑をかけたくない、ということだった。彼らの気を散らさないように注意していた。私たちは、彼らの領域に入り込んだゲストのような気持ちだったから、とにかく頭を下げて、目立たず、きちんとやって、すぐに現場から離れるよう心がけた。なんの騒ぎも起こしたくなかった。わたしたちが、素人のアマチュア団体みたいに見えたら、めちゃ恥ずかしいから。
だから『きちんとやって、さっさと出て行って、彼らの邪魔にならないように』という気持ちが私には常にあって、それがプレッシャーだった。だって、彼らはリアルにそこで本物のレースをやっていたのだから」

ハビエル「あの現場にいることでのプレッシャーもあったが、同時にその世界を間近で内面から見られるという贅沢もあった。この現場にいなければ見えなかったディテールを吸収して、それを僕のキャラクターの演技に活かすことができたのは、本当に恵まれていたと思う。それは恩恵だった。
個人的には、この世界をもっと敬うようになった。あまり知らない世界だったが、今ではそれが理解できるようになった。一つのF1®レースを成立させるには、ものすごい数の人が関わっているんだ、ということがよく分かった。車とドライバーが達成できるように、どれだけ裏方がヘルプしているか。それがはっきりと明らかになった」
ダムソン「僕も最初はケリーと同じように、誰にも迷惑かけず、邪魔することなくやろうという気持ちが先にあって、みんなと自然に溶け込もうと臨んだ。
でも次第に、FIA(国際自動車連盟)のスタッフとも家族のような関係になっていき、何から何まで全力でサポートしてもらった。実際に多くのF1®ドライバーが映画にカメオ出演してくれたし、彼らが前向きに、楽しみにしてくれたのも嬉しかった。
思い出すのは、僕とブラッドがチームらと一緒に写真を撮ったこと。多分、全チームのみんなと。どのチームも彼らのレースカーの横に並んでポーズして、各チームがクルー勢揃いで記念撮影したんだ。僕とブラッドがレッドブル、フェラーリ、メルセデスと、一つ一つ順番に回って、全てのチームとの写真撮り。だって、みんな本当に興奮して応援してくれてたから。
映画に現実味を持たせることを僕らが目指している、ってことを彼らは理解してくれていた。心強かった。僕たち二人が一緒にやったこと、スクリーンに映し出されたものを見れば、この体験なしにはできなかったものだと分かる。だから、フォーミュラ1の世界に、心から敬意を表したい」
――あなた(ケリー・コンドン)演じるケイトはF1®界初の女性テクニカルディレクターで、現実のF1®界にはまだその存在がいません。まだまだ男性社会と言われる世界でそういう役柄を演じたことについてどう思われますか?
ケリー「女性のストラテジスト(戦略担当)は実在していて、役づくりにはそんな現実の戦略家たちを参考にした。ルース・バスコム(Ruth Buscombe)が女性戦略家としてセットに居てヘルプしてくれたし、他にもバーニー・コリンズ(Bernie Collins)。だから何か知りたいことがあったら質問できる女性たちが存在してくれた。
ただ、演じているときは『女性だから』という意識はあまりなかった。だってテクニカルディレクターというポジション自体が、性別に関係なく非常に責任の重い役割でプレッシャーがあるから。何かあったら、テクニカルディレクターの誰かが責められる役となる。
この道に進むには大抵、大学でエンジニアリングの学位を取得してから、職に就く。エンジニアリングの世界は依然として男性中心で、周りの人たちは(大学でも)男ばかり。なんの違いもない。いつものようだと、F1®の仕事を始める頃には、もうそれが普通になって、女性という特別視は消えていく感じだと思う」