【インタビュー】映画『F1®／エフワン』その熱狂の裏側／ダムソン・イドリス＆ケリー・コンドン＆ハビエル・バルデム

ダムソン・イドリス「（ブラッド・ピットと）一緒に仕事をしてもっとも印象に残ったことは、彼が周りの人たちに成功してもらいたい、達成してほしいと、と努力する人だったこと」

――世界各所をチームでめぐった撮影だったとのこと。皆さんそれぞれの思い出深い撮影地は？

ハビエル「僕は最後の地となったアブダビ。映画のラストでもあって、エモーショナルになった。実際のレースが終わった直後、ドライバーがレースカーから降りて、実物の表彰台を使っての撮影。花火が上がって、観衆がいて、その一発撮りの緊張感も含めて、ギリギリまで追い詰めるような感触。感情的になってしまったよ」

ケリー「私はハンガリー。レース後、「パルクフェルメ」と呼ばれる車両保管場所でのシーンを撮影したとき。そこにはレースカーが並び、誰も不正していないことがテスト確認される。そこで、チームにとっての素晴らしい瞬間のシーンを撮影していたの。みんなが意気揚々と嬉しい気持ちになっているシーン。

ところが、そこでの撮影は、ストレスの伴うものだった。だって、そこにある実際の車に、誰かが一度でも触れたら、レース失格になるのよ。カメラはダムソンとブラッドが車から降りるところをとらえなければならず、そのために彼らは、どの車にも触れないようにしながら、後ろ向きに歩いていかなきゃならない。

そして、リアルの実際のドライバーたちがすぐ横を歩いているし、本当にクレイジー。レースを終えたばかりで汗をかいてる本物のドライバーたちが、私たちの真横を歩いているのよ！

そんな中、私たちは2テイクだけで、5分間で、そのシーンを仕上げなければならなくて、ものすごい緊張感。そのシーンをやり遂げたときには、全員が達成感に包まれた。みんなが素晴らしい絆で結ばれた瞬間だった。ええ、本当にハイ。感動の振動で、その後も揺り動かされてた」

ダムソン「僕はシルバーストン。家族がその日、セットに来れて、セットの裏方に入り込んで、その日撮影されてるフッテージを見てた。家族がこの映画に興奮している様子を目にして、どうやって映画が作られているのかを家族に見せられたことが、とても特別な体験だった。僕はロンドン出身のロンドン・ボーイだからね」

ケリー「そのナショナルアンセムを、歌ったのよね！すごい日だった！」

ダムソン「ああ、僕たちはドライバーたちと並んで、一緒に国歌を歌えたのも忘れられない」

ケリー「クレイジーに凄かったわよね」

――あなた（ハビエル・バルデム）とブラッドは、2010年の『食べて、祈って、恋をして』（ブラッドは製作、ハビエルが出演）や2013年の『悪の法則』（ともに出演）でも一緒に仕事をしていますが、本作以前から関係性が深いのでしょうか？

ハビエル「いや、ほとんど会ったことがなかった。知り合いではなかった。『悪の法則』では、一度すれ違っただけ。ちゃんと知り合ったのは、今回の現場が初めてだった。最初に彼に会ったのはテーブルリーディング(台本読み）の時だった」

――では、ブラッドについて新しい発見があったのでしょうか。

ハビエル「僕は56歳で、この仕事を34年とか35年やってきて、そのキャリアの中で今まで誰かと関係がうまくいかなかった経験は一人だけ。その人は、誰にとっても不可能と思わせるくらいのツワモノで」

ダムソン「すまん、申し訳なかった（笑）」

ハビエル「（笑）まあ、でも、一人だけだった。昔の話さ。だからいつでも、誰との仕事も容易にうまくいく、と想像して臨むんだ。そして、本当にそうなる。どんなビッグな役者相手でもね。ハードに働く人たちで、だからこそ、その地位にある。そして才能がある。僕たちが羨望する人たちは、羨望されるだけのものがある。それが分かる。ブラッドの場合は、まさにそうだった」

――あなた（ダムソン・イドリス）は、ブラッド・ピットの大ファンだと聞きました。本当ですか。

ダムソン「（笑）あはは、イエス。（戸惑ったような表情で）」

ケリー「（笑）ノー。（全員、大笑い）」

――ただの噂だったんですね（笑）。

ハビエル「うーん、僕たちみんなファン（笑）」

――そんなブラッド・ピットと共演して印象的だったことは何ですか。

ダムソン「夢が叶った気分だった。彼に最初に会ったのは、確かトレーニングのときで、シルバーストンかロッキンガムと呼ばれる場所だったと思うが。彼がすごく協力的だったのが印象的だった。

一緒に仕事をしてもっとも印象に残ったことは、彼が周りの人たちに成功してもらいたい、達成してほしいと、と努力する人だったこと。常に周囲を引き立て、人を輝かせようとするんだ。それは見てて美しいものだった。彼は最高のリーダーだ。

彼がシーンを追加したり構成していくのを目撃し、そのおかげで、僕のキャラクター、ジョシュアが脚本に書かれていたより大きな存在になっていった。ワオ！　こんな人と一緒に働けるなんて、まさに夢が現実になった。

撮影後、僕が南アフリカで別の映画を撮ったとき、『次の映画の僕の腹筋のほうが、君のよりベターになるからな』って、ブラッドに言った。だって僕は『トロイ』が大好きで、それで彼が披露した腹筋が気になってたから（笑）。すると彼は僕を見て、ちょっと間をおいてから、『ハァッ！』と笑い飛ばした。まるで、誰の腹筋も、俺を超えられないぜ、って感じにね（笑）。最高だね。クールな男だ。一緒に仕事ができて、幸せだった」