ダムソン・イドリス「仕事をして印象に残ったのは、なんといっても、みんなとの仲間意識」
――『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキー監督の新作に出演すると決まったとき、どんなお気持ちでしたか。また、実際にお仕事をされて印象的だったことは?
ケリー・コンドン(以降:ケリー)「仕事が決まったのは、オスカー授賞式の2日後で、私はノミネートされてて(注:『イニシェリン島の精霊』助演女優)、まさに人生最高の1週間だった。電話を受けた後、あまりにも嬉しくてニコニコし続けてしまって、道ですれ違う見知らぬ人からさえ、『あなたには何か良い知らせがあったのね』と言われるほど。本当にワクワク興奮してた。
私は子供の頃からジェリー・ブラッカイマー作品を見てきた。まさか自分がこんな大作ハリウッド映画に出るなんて想像してなかった。自分は女優になるといつも思ってたけれど、私は『性格派女優』であって、こんな大作映画で主役級の女性を演じることになるなんて重大事よ。宝くじに当たったみたい。

ケイト(演:ケリー・コンドン)
仕事をやって驚いたのは、思ったよりずっとリラックスした現場だったこと。こんな大作プロジェクトなのに、リラックスした、すごく楽しい雰囲気だった。予算100万ドルの映画で仕事したときの方が、もっとストレスがあったくらいよ。その雰囲気の違いを分かってもらえるかしら。(この作品は)仕事が、本当に楽しかったの」
ダムソン・イドリス(以降、ダムソン)「出演が決まったという知らせを聞いたのは、タークス・カイコスで夕陽を見てる時だった。一生忘れられないよ。誰かに自分の人生について話してたんだ。『ああ、(泣きそうな声を出して)けっこう苦労してきて、辛い人生だったんだ』って話をしてたんだ。

ジョシュア(演:ダムソン・イドリス)
そのとき、電話がかかってきて、『ヘイ! レースカー・ドライバーになる準備はできてるか?』って、言われたんだ」
ケリー「まあ!なんてこと!」
ダムソン「もう、頭が真っ白。発狂したよ」
ケリー「それも夕陽が沈んでいく瞬間だったなんて!」
ダムソン「ああ、陽が沈んでいくときにね。そして、仕事をして印象に残ったのは、なんといっても、みんなとの仲間意識。ファンタスティックとしか言いようのない、僕にとっての実際のヒーローたちに囲まれたこと。そして実際に会ってみたら、なんて謙虚な人たちなんだ!ってことがわかって(腕をケリーとハビエルに回して)驚くほど素晴らしい人たちだったんだ」
ハビエル・バルデム(以降、ハビエル)&ケリー「オオー!(と、嬉しそうに喜ぶ)」
ハビエル「僕の場合は、食料品店でトマトを選んでたときだった。(笑)」

ルーベン(演:ハビエル・バルデム)
ダムソン「マジで? ”トス・カイコス”(タークス・カイコスの地名をもじって、トマトなどにドレッシングをかけることをトスと言うので)じゃなくて、”ショップ・トマト”だったのか!(笑)古い車に石投げてたとかじゃなくて?」
ハビエル「僕はシカゴにいて、そこに電話がかかってきた。ジョー(ジョセフ・コシンスキー監督)とのZoomビデオ通話で、彼が話しだそうとしてるのに、彼に話すチャンスを与えなかった。どれだけ映画『トップガン』が大好きか、ってことを、僕は彼に話し続けてしまったんだ(笑)。
ジョーが、「だが、話があるんだが」って伝えようとしていたのに、僕は『ノー、ノー、ちょっと待ってくれ。あのシーンの、あの瞬間、あれを観た時は本当にたまげて』みたいに。『ちょっと話させてくれ』と言われても、ノー、ノー、って話を止めなかった。
で、『何を伝えなきゃならないんだい?』って、聞いたら、ジョーが『F1®についての映画を製作するので、あなたに関わってもらいたい』って、言うじゃないか。『もちろん!やる!イエス!』って、即答さ。決まり!ってね」
――あなた(ハビエル)が演じるルーベンとブラッド・ピット演じるソニーは、再会した瞬間から、長年の関係性が感じられる雰囲気を醸し出していましたね。間や表情で意思疎通ができる感じは特に印象的でしたが、二人の空気感について監督、そしてブラッド・ピット本人とも相談して方向性を決めたのでしょうか。
ハビエル「僕たちはそれについて話した。監督のジョーやブラッド、脚本家やプロデューサーらと話したが、やはり実際には現場で演じてみて、どうなっていくか様子を見ることが重要だった。ブラッドとは、とてもリラックスできる関係だと感じていて、彼もそう感じてくれてたと願うので、ただシーンを演じてみて、僕たち二人がどこへ進んでいくのかを見てみることに心地よいと感じた。
ケリーが言ってたように、大予算映画を製作しているプレッシャーを感じることなく、メガホンとるジョーはいろいろ違うオプションを僕たちに与えて、シーンを演じさせてくれた。あのシーンは長いセリフ場面だったから。容易だった。楽しかったんだ。いろんなオプションを編集者と監督に渡せて、幅広い選択肢を与えることができたことが嬉しかった。シーンをじっくり撮り続ける機会が持てることに、とてもハッピーに感じた。2日かけて、あのシーンを演じられたのは贅沢だった」
――ダムソンさん、あなたは過酷なトレーニングに挑んで役作りをしたそうですね。苦しいこともあったと思いますが、役作りをする中で一番面白かったことは何ですか。
ダムソン「やっぱり車の運転が、一番、気分爽快だった。最初は、どうなることかと想像もつかなかった。すでに車の運転の体験はあった。だが、フォーミュラ1カーに乗って、実際にグランプリからグランプリへと移動し、シーンを10分という時間内に撮影するなんて。それも実際の観衆がいる中で。それには、すごいプレッシャーがあった。でも、最後のレースシーンをアブダビで終えたとき、『ダムソン、これがあなたが運転する最後になります』と言われた時、僕はちょっと、涙が出てしまった」
――そうなんですか!
ダムソン「だって、その車は僕のベイビー、自分の子供みたいになっていたから。車の側を通るたび、(良い子だと)撫でたりしてたんだ。(爆笑) 本当に素晴らしかった。終わったときは、ハートが張り裂けるほど、本当に悲しかった」
ハビエル「(車と)一体になったからだね」
ダムソン「そうなんだ。僕はタイヤの上に乗ったり、歩き回ったりしていてね。周りには整備士がたくさんいて、彼らが何やってるか分からなくても、イエス!って車を見つめて、『それ直して』とか『そこ、締めて』とか言ってた(笑)」