真唯子を立ち上げた黒島結菜の“現代性”
──主演の黒島結菜さんとは『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015)以来ですが、今回、黒島さんにお願いしたのはどうしてでしょうか。
黒島さんは、どちらかというととてもサバサバした性格なんですよね。すっきりしていて、ある意味では少し男の子っぽさも感じる。その雰囲気が、今回の真唯子という人物に合うのではないかと思いました。
彼女は沖縄出身で、10代の頃から東京に出てきていますが、最初にご一緒したときから、いわゆる「地方から出てきた人」という印象はあまり受けませんでした。ただ一方で、どこかにそうした背景をきちんと持っている感じもあって、そのバランスがとても魅力的だったんです。
今回の役は、東京にいながら地方と繋がっている人物でもありますが、昔の日本映画にあるような典型的な描き方ではなく、もっと現代的な感覚で表現したいと思っていました。その点でも、黒島さんなら“今の時代の地方出身者像”を自然に体現してくれるのではないかと感じました。
また、教師としての一途さやまっすぐさ、誰かを守ろうとする強さといった部分も、彼女ならしっかり表現できると思い、お願いしました。
──黒島さんはインタビューの中で、心情の変化の演じ分けが難しかったとおっしゃっていましたが、そのあたりはどのように引き出し、演出されたのでしょうか。
現場では、そういうふうに悩んでいる様子はまったく見せないんですよ、黒島さんは。もともとそういう姿を人に見せるタイプの俳優ではないですね。とてもサバサバしていて、現場でも決断が早いというか、すっぱりしている印象です。
なので、あまりこちらが細かく引き出すというよりは、彼女自身がすっと役に入っていく感じでした。黒島さんのインタビューを読んで、初めて「そう感じていたんだ」と知ったくらいです。そういう意味では、新しい一面を改めて知った感覚ですね。

──黒島さんは真唯子のキャラクターをおせっかいと捉えていらっしゃったとインタビューで答えていますが、そちらについてはいかがですか。
いや、それも今、初めてインタビューを読みました。俳優と監督っていうのは見えているものが違うのかもしれないですね。
──黒島さんが「走るシーンが多く、肉体的にもハードだった」と語っていますが、あえて「走る」という動作を多く取り入れた意図は何でしょうか。
そんなに多かったですか(笑)。
先程、感情の変化を表現するのが難しいという話がありましたが、身体を動かすことで、むしろ感情は出しやすくなる部分があると思うんです。たとえば、真唯子が誰かを探して追いかけるシーンや、ラブホテルから階段を上がっていく場面など、身体を使って演技することで、その人の感情が自然と伝わってくる。そういう瞬間って、見ている側としても「映画っていいな」と感じるんですよね。
黒島さんだけでなく、北川(景子)さんにも、そうした身体を使った、いわばプリミティブな感情表現をやっていただいています。シンプルな動きではあるんですが、そこから人物の気持ちが浮かび上がってくるような感覚がある。
そういう意味で、肉体の動きから感情が伝わるというのは、映画ならではの表現であり、醍醐味だと思っています。そうした積み重ねの中で、改めて映画の面白さを感じることがありますね。

