北川景子の爆発力 松坂桃李が体現した“実直さ”

──その北川さんが章子の母・文乃を演じています。『ラーゲリより愛を込めて』(2022)でも母親役を演じていらっしゃいましたが、今回、お願いしたのは、どんな部分に期待されていたのでしょうか。

『ラーゲリより愛を込めて』のときも母親役でしたが、印象に残っているのは、夫である二宮(和也)さんからの電報を見て、庭に転げ落ちて泣くシーンなんです。そのときの北川さんの姿勢というか、芝居への向き合い方が本当に素晴らしいと感じました。

あのシーンは実話が元になっていて、実際のモデルの方も、庭ではなく畳の上ですが、同じようにのたうち回って泣いたそうなんです。それを踏まえて演じていただいたのですが、そのときの一気に感情が爆発するような表現に、すごく圧倒されました。こちらの想像を超えたエモーショルなものが立ち上がっていて、あの佇まいからは想像できないほど、振り切った表現が印象的でしたね。

今回の作品でも、子どもを守ろうとする母親として必死になっていく役どころですし、そうした感情の爆発が求められる場面も多い。だからこそ、あのときに見せてくれたような、強い感情表現をもう一度発揮してほしいという思いがありました。

──北川さんはクライマックスでの感情の爆発と同時に、文乃が“オフ”になっているときの冷たさも印象的でした。

すごく綺麗な方ですし、人形のような佇まいがありますよね。そのコントラストも含めて、非常に魅力的だったと思います。本当に素晴らしかった。

画像1: 北川景子の爆発力 松坂桃李が体現した“実直さ”

──章子の父である良太を松坂桃李さんが演じています。原作の良太はいかつい顔という設定ですが、なぜ松坂さんをキャスティングされたのでしょうか。

性格的にはとてもはまっていたと思います。ある事件をきっかけに、彼は市役所勤務という地味な生活を選びますよね。いわば半ば隠遁するように、静かに生きていこうとする人物です。

その一方で、文乃との再会の場面では、わざわざ見知らぬ街に出向き、ラブホテルに入るという行動に出る。そうした一途で実直な思いを、飾らずにまっすぐ表現できる俳優であることが重要でした。

松坂さんには、一見地味で控えめな佇まいの中に、しっかりとした意思を感じさせる力があります。そうした実直さがあるからこそ、静かに生きようとしていた人物が、再会によって人生を変えていくという運命の流れにも説得力が生まれると感じました。

顔立ちや佇まい、芝居の質感も含めて、あの役は松坂さんだから成立した部分が大きいと思います。どこか観客に近い存在として感じられる点も含めて、非常に適したキャスティングだったのではないでしょうか。

──文乃と章子にとって、良太は「希望そのもの」の存在ですが、彼はある秘密を抱えていました。

その部分については、松坂さん自身がしっかりと表現してくれていたと思います。特別に細かく演出したというよりは、彼が自分の中でつかんで演じていた印象ですね。本人にとってはそこまで難しい部分ではなかったのではないでしょうか。

ただ、見ていて圧巻だったのは、やはりラブホテルでの再会のシーンです。北川さんとの場面ですが、再び出会い、そこからもう一度ふたりで新しい人生を歩もうとする。その瞬間のやり取りは、本当に見応えがありました。

あのシーンは、ふたりの芝居のぶつかり合いというか、感情の炸裂の仕方が非常に印象的で、作品の中でも大きな見どころになっていると思います。

画像2: 北川景子の爆発力 松坂桃李が体現した“実直さ”

──章子役の山﨑七海さんについて、「オーディションの段階で最初から圧倒的だった」と評されています。

圧倒的に素晴らしかったですね。いわゆる“飼いならされていない感じ”というか、整いすぎていない存在感があるんです。変な言い方かもしれないけれど、どこか“その辺からふっと現れたような”生々しさがあるというか。いまの時代って、どうしてもいろんなことが整えられてしまう中で、ああいう野生味を持った人は貴重だと思うんですよね。

だからこそ、あの存在感がすごく魅力的だったし、実際に現場でも、ほとんど自由にやってもらっていました。こちらが細かくコントロールするというよりは、彼女が持っているものをそのまま出してもらう方が、この作品には合っていると感じたので。結果的に、演じるうえで苦労している様子もほとんど見せなかったですね。

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