次世代に届けるための“ギリギリのライン”

──劇中の壮絶ないじめや暴力のシーンは、観る者の心に深く刺さります。これらの描写において、加減やリアリティのラインをどう設定されましたか。

正直に言うと、原作である湊かなえさんの小説に比べると、少し生ぬるかったのではないかという思いはあります。原作の設定はもっと過激ですし、もっと踏み込むこともできたのではないか、と振り返って感じる部分もあります。

ただ一方で、この作品は子どもたちにも観てほしいという気持ちがあったんです。この題材自体が、まさに今の若い世代に関わる問題を扱っているので、その当事者である世代にも届いてほしい。そう考えると、レイティングの問題も含めて、どこまで描くかというのは非常に難しい判断でした。

その中で、自分なりに「ここがギリギリだろう」というラインを見極めながら作っていったつもりです。もちろん、もっと強く描く方法もあったのではないかという思いは残っていますが、多くの人に観てもらうためには、このバランスで勝負するしかなかった、というのが正直なところですね。

──監督のこれまでの作品の中で、この作品はどのような位置づけになっていくと思われますか。

この作品でいちばん印象に残っているのは、ラストカットです。章子と亜里沙がカメラに向かって叫ぶ。あの瞬間、観ている側に何かを突きつけてくる力があると思うんです。

いまの時代は、世界情勢も含めて非常に不安定で、守られていない人たちの声があちこちから上がっている。その“助けを求める叫び”に対して、自分たちは何ができるのか——そういう問いを、まるで刃を突きつけられるような感覚で受け取った気がしています。

だからこの作品は、単に一本の映画としてどうこうというよりも、そういう時代の中で生まれた湊かなえさんの小説があって、それを映画として受け取った自分がいる、という意味合いのほうが大きいかもしれません。

その突きつけられたものに対して、これから自分がどう応えていくのか。映画を作り続ける人間として、その答えを作品の中で探していかなければならないと感じています。そういう意味で、この作品は「これからどうするのか」を問われるきっかけになった一本だと思います。

画像: 次世代に届けるための“ギリギリのライン”

<PROFILE> 
瀬々敬久 
1960年生まれ、大分県出身。 
京都大学在学中から自主映画を制作。助監督を経て、『課外授業 暴行』(89)で監督デビュー。10年、自主制作した『ヘヴンズ ストーリー』が第61回ベルリン映画祭国際批評家連盟賞とNETPAC(最優秀アジア映画)賞を受賞。以降数々の話題作、ヒット作を手掛ける。  
主な作品に、『64-ロクヨン- 前編/後編』(16) 、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)、『友罪』(18)、『楽園』(19)、『糸』(20)、『護られなかった者たちへ』(21)、『とんび』(22)、『ラーゲリより愛を込めて』(22) 、『春に散る』(23)、『少年と犬』(25)など。公開待機作に『SUKIYAKI 上を向いて歩こう』(26年12月25日公開)、『存在のすべてを』(27年2月5日公開)がある。

画像: 【インタビュー】湊かなえの傑作に挑む『未来』瀬々敬久監督

『未来』2026年5月8日(金)全国公開

画像: 映画『未来』本予告【2026年5月8日(金)公開】 youtu.be

映画『未来』本予告【2026年5月8日(金)公開】

youtu.be

<STORY> 
複雑な家庭環境で育ちながらも、祖母の期待に応えて教師になるという夢を叶えた真唯子。彼女の教え子・章子のもとにある日、一通の手紙が届く。差出人は――「20年後のわたし」。半信半疑のまま返事を書くことで、父を亡くした悲しみや、心を閉ざした母との孤独な日々に耐えていた章子だが、母の新しい恋人からの暴力、壮絶ないじめ、そして信じがたい事実が彼女を容赦なく追い詰めていく。深い絶望の中、章子は唯一心を通わせる友人・亜里沙と「親を殺す」という禁断の計画を立てるのだった。そんな章子を救おうと真唯子は、残酷な現実と社会の理不尽さに押しつぶされそうになりながら、それでも手を差し伸べようとするが――。 誰もが過酷な運命に吞み込まれようとする中で、「未来のわたし」からの手紙が導くのは、希望か。それとも、さらなる絶望か――。

<STAFF&CAST> 
原作:湊かなえ「未来」(双葉文庫) 
監督:瀬々敬久 
脚本:加藤良太 
出演:黒島結菜、山﨑七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、松坂桃李、北川景子 
配給:東京テアトル 
© 2026 映画「未来」製作委員会 ©湊かなえ/双葉社

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