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グランプリ、監督賞受賞作など
戦争を背景にした作品がずらり

グランプリ受賞作『ミノタウロス』(アンドレイ・ズビャギンツェフ監督)
では、戦争を背景とした受賞作を見ていこう。グランプリのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督『ミノタウロス(原題)』は対ウクライナ戦争下のロシア富裕層の話。妻の不倫を疑う夫が殺人を犯すが権力と癒着している夫はまんまと逃げおおす。彼の殺人は戦争の陰に隠されてしまうのである。権力と財力が愛を圧殺するロシアを批判する監督らしい作品だ。

グランプリの『ミノタウロス』のズビャギンツェフ監督にゾーイ・サルダナから盾が
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監督賞の『ブラック・ボール(英題)』はゲイのカップルである監督ハヴィエル・アンブロッシとハヴィエル・カルヴォの作品。スペイン市民戦争時代と現在、3人のゲイの物語が交錯する三部作でガルシア・ロルカの失われた原稿がそのカギとなっていく。

『ファザーランド』のパヴェウ・パヴリコフスキを囲む『ブラック・ボール』のハヴィエル・アンブロッシ&ハヴィエル・カルヴォは共に監督賞受賞
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監督賞にはもう1本、パヴェウ・パヴリコフスキ監督『ファザーランド(原題)』が選ばれた。1949年にトーマス・マンがナチス政権を避けて戦争中に亡命していたアメリカから、冷戦下東西に引き裂かれた故郷ドイツを訪問する旅を描く。娘エリカが付き添い車を運転、通訳も務めるのだが、その間にゲイであることを疎んじられていた長男クラウスが自殺する。息子を切り捨てたノーベル文学賞受賞者の父を冷静な怒りを込めて見つめる娘を演ずるザンドラ・ヒュラーがいい。
脚本賞受賞作に現在の戦争の状況を自分事として
重ねて見る人が多かったのでは
脚本賞はエマニュエル・マールの監督・脚本作『ア・マン・オブ・ヒズ・タイム(英題)』。主人公は第2次大戦ナチス占領下のフランス傀儡政権で家族を養うために官僚になり“戦時中のフランス国民のために働いた”男。その選択を責めることはできるのか…。監督の曽祖父母の往復書簡からインスパイアされたという物語である。

男優賞を『カワード』のエマニュエル・マキアとヴァランタン・カンパーニュがW受賞
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男優賞をW受賞したルーカス・ドン監督『カワード(原題)』は第1次大戦のベルギー軍で慰問団を作り魅かれあっていく新兵ふたりの話。重たい映画が多い中、フレッシュな二人の恋が戦場で育つ様子は救われる感じがした。そういえばどことなく審査員長パク・チャヌクの『JSA』に似てなくもなかったかも。『ブラック・ボール』『ファザーランド』と『カワード』はクィア映画でもあったが、コンペ22本中7本もクィア映画があったのも特記しておこう。

是枝裕和監督(左)のコンペ作『箱の中の羊』のレッドカーペットに登場した綾瀬はるか、桒木里夢、大吾
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実は3種類ある日報によれば、パルムドオルを受賞した『フィヨルド』よりも『ミノタウロス』『ア・マン・オブ・ヒズ・タイム』の方が評価は高かった。特に『ア・マン・オブ…』に対するフランス人ジャーナリストの高評価が目立った。彼らは、戦争が始まるかもしれない現在、その時自分はどうするのかとこの作品に重ね問うていたのだと思う。

フォトコールに臨むコンペ作『ナギダイアリー』の石橋静河、深田晃司監督、松たか子
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第2次大戦時のフランスを描く映画では占領下の人々はみんなレジスタンスになりナチスに抵抗していたと描かれがちだが、実際にはレジスタンスに加わったのは1割、対独協力者が1割、後の8割は嵐の通り過ぎるのを待っていた、と聞いたことがある。まさに『ア・マン・オブ…』の主人公。英雄になれない男を哀し気に演じたスワン・アルノーの姿が戦争の縁にあるヨーロッパの当事者の身に、自分事として染みたのだと思う。

開会式でイライジャ・ウッドからピーター・ジャクソン監督に名誉パルムドールが渡された
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今年、ハリウッド・メジャーの大作とスターなしでもカンヌは輝き、世界を映し出した。まぁ、幾分地味だったことは認めるが、カンヌ国際映画祭は映画祭の意義に賭けたのである。
第79回カンヌ国際映画祭受賞結果
コンペティション部門
パルムドール:『フィヨルド(原題)』(クリスティアン・ムンジウ監督)
グランプリ:『ミノタウロス(原題)』(アンドレイ・ズビャギンツェフ監督)
審査員賞:『ドリームド・アドベンチャー(英題)』(ヴァレスカ・グリーゼバッハ監督)
監督賞:(同点)ハヴィエル・カルヴォとハヴィエル・アンブロッシ(『ブラック・ボール』英題)、パヴェウ・パヴリコフスキ(『ファザーランド』原題)
男優賞:エマニュエル・マキアとヴァランタン・カンパーニュ(『カワード』原題)
女優賞:ヴィルジニー・エフィラと岡本多緒(『急に具合が悪くなる』)
脚本賞:エマニュエル・マール(『ア・マン・オブ・ヒズ・タイム』英題)
名誉パルムドール:バーブラ・ストライサンド、ピーター・ジャクソン、ジョン・トラヴォルタ
ある視点部門
最優秀作品賞:『エブリタイム(原題)』(サンドラ・ウォルナー監督)
審査員賞:『エレファンツ・イン・ザ・フォッグ(原題)』(アビナッシュ・ビクラム・シャー監督)
