映画史に刻まれる『勝手にしやがれ』とジャン=リュック・ゴダール

1960年に登場した『勝手にしやがれ』(7月24日より再公開)
『勝手にしやがれ』は1959年8月17日から9月19日に渡ってパリとマルセイユ近郊で撮影され、1960年3月16日にフランスで公開された(日本も10日遅れて公開)ヌーヴェルヴァーグの記念碑的作品。当時20世紀フォックスのパリ宣伝部で働いていたジャン=リュック・ゴダールが、製作者ジョルジュ・ド・ボールガールに企画を持ち込んだところ、その中に当時『大人は判ってくれない』がカンヌ国際映画祭で賞賛を浴びていたフランソワ・トリュフォーがシノプシスを書いたものがあり、ボールガールはこれに興味を示した。ボールガールはゴダールの友人であるトリュフォーに脚本を書いてもらうという提案を出してゴダールの長編監督デビュー作がスタートする(実際脚本を書いたのはゴダールだったが、脚本は書き直しに次ぐ書き直しで、撮影当日スタッフに渡されることも多々あった模様)。ボールガールは撮影監督に旧知のラウール・クタールを担当させる条件を出した。クタールは報道畑出身で、隠し撮りや車いすを使った移動撮影など低予算ならではの事態にも柔軟に対応する能力を持っていた。ゴダールの即興演出はアドリブを多く取り入れ、当時若手の主演俳優ジャン=ポール・ベルモンドは楽しんだものの、米国から呼び寄せたヒロインのジーン・セバーグは不満を持っていたそう。

『勝手にしやがれ』に出演もしていたゴダール監督
物語はミシェルというチンピラ風の男がマルセイユで自動車を盗み、パリに行く途中で警官を射殺してしまう。彼はパリに着くとかつての恋人で新聞売りをしている記者志望のパトリシアの元に転がり込み、金を調達してイタリアに逃れようとするが、逃走犯を探す警察の捜査網が迫ってくる…というのが一応の流れ。しかし本作はストーリーよりもその映像表現こそが斬新で、手持ちカメラやジャンプカット編集などの手法や大手スタジオには不可能な製作スタイルがその後の作家たちの映画作りに大きな影響を与えた。だがリチャード・リンクレイター監督の『ヌーヴェルヴァーグ』は、映画史上重要な作品となった『勝手にしやがれ』やゴダールの神格化された一面でなく、その自由奔放な製作現場を再現して、当時の若者たちによる“映画革命の精神”を現代の観客たちに味わってもらおうとする楽しい作品だ。自分も映画を撮ってみたいという気持ちになるかもしれない。
〈ゴダール作品がこの夏、連続公開!〉『ヌーヴェルヴァーグ』の公開に併せ、ジャン=リュック・ゴダール監督作品が連続で劇場のスクリーンに甦る

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まずゴダールの2大代表作『勝手にしやがれ』が7月24日より、『気狂いピエロ』が7月31日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次再公開される。『ヌーヴェルヴァーグ』の中でその製作過程が描かれた『勝手にしやがれ』は一度は見ておきたい名作。製作から60周年を記念して可能な限りのレストアで作られた決定版を上映。『気狂いピエロ』(65)はジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナ共演で贈るゴダール最大の人気作。製作50周年記念で、失われた素材を復元して鮮やかな色と音を蘇らせた版での上映だ。配給は共にオンリー・ハーツ。

また6月20日から特集上映「21世紀のジャン=リュック・ゴダール わたしたちの映画2001‐2010」がシアター・イメージフォーラムほかで全国順次開催。21世紀に入ってから生み出されたゴダールの鬼才ぶりが際立つ4作を紹介する。上映作は『愛の世紀 4K修復版』(01)『アワーミュージック 4K修復版』(04)『映画史特別編 選ばれた瞬間 HD版』(05)『ゴダール・ソシアリスム 2K版』(10)。新世紀に入ってデジタルビデオという新たなメディアを得たゴダールが新しい映像表現を追求した姿勢に目を見張る。配給はアイ・ヴィー・シー。

