常識破りな新人監督J=L・ゴダールが生み出した名作『勝手にしやがれ』。その誕生の舞台裏を描く『ヌーヴェルヴァーグ』は、映画作りに熱中することの素晴らしさを伝えてくれる刺激的で楽しい作品です。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

仏映画界に“新しい波”をもたらした名作『勝手にしやがれ』の製作現場を再現する『ヌーヴェルヴァーグ』

画像1: 仏映画界に“新しい波”をもたらした名作『勝手にしやがれ』の製作現場を再現する『ヌーヴェルヴァーグ』

1950年代後半のフランスで起きた新世代作家による映画運動の決定打として称賛される名作が、ジャン=リュック・ゴダールが28歳の時に撮った初長編映画『勝手にしやがれ』。映画史に今も語り継がれるこの作品はいかにして生まれたのか。『6才のボクが、大人になるまで。』などの米監督リチャード・リンクレイターが、伝説の名作が生まれた瞬間を映画化した作品で、「これは自分にも映画が作れると信じさせてくれた人々と、“映画を作るべきだ”と確信させてくれた人々へのラブレターだ」と監督が語る本作は、映画作りに熱中することの喜びと創作の素晴らしさを観客に伝える青春映画でもある。

画像2: 仏映画界に“新しい波”をもたらした名作『勝手にしやがれ』の製作現場を再現する『ヌーヴェルヴァーグ』

ゴダールを演じるギヨーム・マルベック、ジャン=ポール・ベルモンドを演じるオーブリー・デュランはオーディションで選ばれた新人。ジーン・セバーグを『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』でリンクレイターと組んだゾーイ・ドゥイッチが演じる。また当時の映像スタイルを模して画面のアスペクト比は1.37:1のモノクロ映像で製作されている。

ストーリー

画像: ストーリー

1959年、カイエ・デュ・シネマ誌で映画評を執筆していたジャン=リュック・ゴダール(マルベック)は、プロデューサーのボールガールに「準備はできている。自分に映画を撮らせてくれ」と売り込む。カイエの仲間、トリュフォーやシャブロルに後れを取った彼は自分も長編映画を撮りたいと熱望していたのだ。ゴダールは盟友トリュフォーが実際の事件に基づいて書いたプロットを原案とする企画の映画化をボールガールから提案される。これを受けた彼は主演にかつて短編で組んだジャン=ポール・ベルモンド(デュラン)を主人公に起用。アメリカの注目俳優ジーン・セバーグ(ドゥイッチ)が主演女優のオファーを受け、主要スタッフも次々決まっていく。

いよいよ撮影初日を迎えるがわずか2カットを撮って終了。翌日のリハーサルもなく、脚本も「セリフは覚えずに演じてもらう」と渡そうとしない。それ以降もゴダールは型破りな撮影を行い、スタッフや俳優を困惑させるが、映画製作という夢を共有する撮影チームの間には和やかな空気も漂っていた。こうして撮影は佳境に入っていくが…。

ヌーヴェルヴァーグとは?

1950年代末期フランスで起こった新世代監督たちによる映画運動を指し、英語でいうニューウェーブ(新しい波)を意味する言葉。映画製作会社に所属した助監督などの経験を持たずにデビューした若い監督たちが、主にノンプロの俳優を起用し、ロケ撮影を中心に、同時録音、即興演出など既存のルールに抗うような手法を使って低予算で製作した一連の作品の総称でもある。主な作家にジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロル、エリック・ロメールなど雑誌“カイエ・デュ・シネマ”で映画批評活動をしていた若者たちがおり、彼らが映画製作に乗り出し、世界的な映画祭で高評価を受ける例が多い。代表的な作品にゴダールの『勝手にしやがれ』、トリュフォーの『大人は判ってくれない』、シャブロルの『いとこ同志』などがある。 

キャラクター紹介

画像: ジャン=リュック・ゴダール(ギヨーム・マルベック演)

ジャン=リュック・ゴダール(ギヨーム・マルベック演)

ジャン=リュック・ゴダール(ギヨーム・マルベック演)
“カイエ・デュ・シネマ”の執筆者で、仲間たちの成功を見て、いよいよ長編映画製作に乗り出す。しかしその演出法はすべて常識破りだった…。

画像: ジャン=ポール・ベルモンド(オーブリー・デュラン演)

ジャン=ポール・ベルモンド(オーブリー・デュラン演)

ジャン=ポール・ベルモンド(オーブリー・デュラン演)
ゴダールの場当たり的な演出にもめげず、いつも上機嫌で現場に活気を与える主演男優。後に『気狂いピエロ』でもゴダールとタッグを組む。

画像: ジーン・セバーグ(ゾーイ・ドゥイッチ演)

ジーン・セバーグ(ゾーイ・ドゥイッチ演)

ジーン・セバーグ(ゾーイ・ドゥイッチ演)
『悲しみよこんにちは』で注目を集めた米国の若手女優。ゴダールの型破りな演出方法に疑問を抱き、出演をやめたいと考えているが…。

覚えておきたい“ヌーヴェルヴァーグ”の重要人物

フランソワ・トリュフォー(アドリアン・ルイヤール演)
ゴダールに並ぶヌーヴェルヴァーグ運動の中心人物。“カイエ・デュ・シネマ”で映画評を執筆し、『大人は判ってくれない』などを監督。

クロード・シャブロル(アントワーヌ・ベッソン演)
トリュフォーやゴダールと共に“カイエ・デュ・シネマ”で映画評を執筆し、監督第2作『いとこ同志』がベルリン国際映画祭で金熊賞受賞。

ジョルジュ・ド・ボールガール(ブルーノ・ドレイフェルスト演)
ゴダールを世に送り出した仏映画界の製作者で、初期のゴダール作品はじめ、多くのヌーヴェルヴァーグ系作家の映画をいくつも手がけた。

ラウール・クタール(マチュー・パンシナ演)
『勝手にしやがれ』はじめゴダール作や、『突然炎のごとく』などトリュフォー作はじめ、ヌーヴェルヴァーグ運動を支えた名カメラマン。

スザンヌ・シフマン(ジョディ・ルース・フォレスト演)
トリュフォー作品の共同脚本や助監督を何度も務め、ゴダール作品にも携わったことがあるヌーヴェルヴァーグの映画人たちにとってに欠かせない存在。

映画『ヌーヴェルヴァーグ』には他にも、ジャック・リヴェット、エリック・ロメール、ジャン=ピエール・メルヴィル、ロベルト・ロッセリーニ、ロベール・ブレッソン、ジャン・コクトー、アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドゥミといった名監督・著名人たちも続々登場する。

『ヌーヴェルヴァーグ』
2026年7月10日(金)公開
フランス/2025/1時間46分/配給:AMGエンタテインメント
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ギヨーム・マルベック、ゾーイ・ドゥイッチ、オーブリー・デュラン

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