坂口健太郎と対話を重ねてたどり着いた“夕平”という人物
──監督は「寂しさや憂い、弱さと強さが同居する佇まいに惹かれ、坂口健太郎さんに夕平を託したいと考えた」そうですが、実際に顔を合わせてみて、いかがでしたか。
実際にお会いして、「雰囲気はぴったりだな」と思いました。ただ、人柄は想像していた以上に明るかったですね。坂口さんって、本当に明るい体育会系の方なんです。そこは僕が最初に抱いていたイメージとは全然違いました。それが逆に面白かったんですよ。
しかも、憂いのある役ができないわけではなくて、その一面は彼の中にちゃんとある。それをきちんと引き出して演じてくださる方だと思いました。
その上、とても率直に話し合える方なんです。何でも気兼ねなく相談しながら一緒に作品をつくっていけるので、夕平という人物も二人で話し合いを重ねながら作り上げていった感覚がありました。
もちろん、坂口さん自身がそのまま夕平のような人物というわけではありません。でも、その人物へと近づいていくアプローチが本当に素晴らしかったですし、僕が思い描いていた夕平を見事に体現してくださいました。
──坂口さんと一緒に役を作っていく中で、最初に思い描いた夕平が変化したところはありましたか。
変わったというより、オリジナル作品なので、僕の中にはぼんやりとしたイメージはあっても、最初から「これが正解」というものがあるわけではないんです。僕が想像していた夕平を体現してくれるのが坂口さんであって、だからといって、僕のイメージを100%そのまま再現することが正しいわけでもありません。実際に坂口さんが演じてくださることで、僕の想像とは少し違うものが生まれたり、人物に肉体や血が通うことで、「こういう人だったんだ」と気づかされることもありました。
ですから、まったく予想していなかったものが出てきたというよりは、僕が思い描いていた夕平をさらにブラッシュアップしてくださった、という感覚ですね。特に面会室のシーンは、とても難しい場面になるだろうと思っていましたし、最後に朝子から問いかけられて、夕平がうなずくシーンも、本当に難しい芝居になるだろうと感じていました。
でも、あの場面では僕の想像を超えるお芝居を見せてくださって、「これが夕平なんだ」と、逆に僕自身が教えられたような気持ちになりました。

──面会室のシーンはかなりテイクを重ねられたそうですね。
難しかったですね。あのシーンを簡単に演じられる俳優は、そんなにいないと思います。ワンテイクで終わるとは最初から考えていませんでした。「ここは違う」「もう少しこうしたい」と話しながら、最後まで粘り強く作っていきました。
(朝子役の)早瀬さんにとっても難しいシーンでしたし、坂口さんにとっても難しかった。だからこそ、お互いに探り合いながら、共鳴し合いながら作り上げていった感覚があります。
──面会室のシーンは、坂口さんが髪を切る必要もあったことから、撮影の終盤に撮られたとうかがいました。お二人とも役としての人生を積み重ねた上で臨めたという意味では、とても良いタイミングだったのではないでしょうか。
それは本当に良かったと思います。早瀬さんも、子ども時代の朝子を演じたシーンの撮影を見学していて、そこまでの流れをしっかり感じた上で臨んでくれていました。
夕平も、朝子との愛おしかった日々を描くシーンをすべて撮り終えたあとで面会室のシーンに入ったので、気持ちも自然と積み重なっていたと思います。撮影の順番としては、一番いい形で臨めたと思いますね。

