現代映画界の最前線を走り続ける希代の映像作家クリストファー・ノーラン。アカデミー賞の頂点に輝いた『オッペンハイマー』の次に選んだ題材は、約2800年前に生まれた冒険物語の原点「オデュッセイア」。そして、その壮大な物語を映像化するため、ノーランが挑んだのは映画史上初となる全編IMAX®撮影。作家、物語、映像 ── それぞれの“極”が交わる『オデュッセイア』。その全貌に迫る。(文・神武団四郎(序文)、平沢薫(4つの逸話)、編集部(作品紹介、NYプレミア)/デジタル編集・スクリーン編集部)

ニューヨークプレミアにノーラン監督&豪華キャストが集結!語られた『オデュッセイア』の舞台裏

全米公開前に、ニューヨークで開催された『オデュッセイア』のプレミア。ノーラン監督と豪華キャスト陣が、規格外の撮影や互いへの信頼など、壮大な作品を生み出した舞台裏を語りました。

画像: (左から)トラヴィス・スコット(楽人役)、ベニー・サフディ(アガメムノン役)、エリオット・ペイジ(シノン役)、コーリー・ホーキンズ(ポリュボス役)、トム・ホランド(テレマコス役)、エマ・トーマス(プロデューサー)、クリストファー・ノーラン(監督・脚本・製作)、マット・デイモン(オデュッセウス役)、アン・ハサウェイ(ペネロペ役)、ルピタ・ニョンゴ(ヘレネ/クリュタイムネストラ役)、シャーリーズ・セロン(カリュプソ役)、ジョン・レグイザモ(エウマイオス役)、ゼンデイヤ(アテナ役)、サマンサ・モートン(キルケ役)、ヒメーシュ・パテル(エウリュロコス役)、ジョン・バーンサル(メネラオス役)、ローガン・マーシャル=グリーン(メランティオス役) Photo by Mike Coppola/Getty Images for Universal Pictures

(左から)トラヴィス・スコット(楽人役)、ベニー・サフディ(アガメムノン役)、エリオット・ペイジ(シノン役)、コーリー・ホーキンズ(ポリュボス役)、トム・ホランド(テレマコス役)、エマ・トーマス(プロデューサー)、クリストファー・ノーラン(監督・脚本・製作)、マット・デイモン(オデュッセウス役)、アン・ハサウェイ(ペネロペ役)、ルピタ・ニョンゴ(ヘレネ/クリュタイムネストラ役)、シャーリーズ・セロン(カリュプソ役)、ジョン・レグイザモ(エウマイオス役)、ゼンデイヤ(アテナ役)、サマンサ・モートン(キルケ役)、ヒメーシュ・パテル(エウリュロコス役)、ジョン・バーンサル(メネラオス役)、ローガン・マーシャル=グリーン(メランティオス役)
Photo by Mike Coppola/Getty Images for Universal Pictures

7月14日、ニューヨークで開催された『オデュッセイア』のプレミアには、マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ルピタ・ニョンゴ、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロンら豪華キャストが集結。彼らの口から語られたのは、映画そのものに負けず劣らず壮大な撮影の舞台裏だった。

主人公オデュッセウスを演じたデイモンは、役作りのため体重を167ポンド(約75.7kg)まで落とし、毎朝3時や4時からトレーニングに励んだという。6カ国にまたがる撮影を、単なる仕事ではなく「遠征(エクスペディション)」と表現。1000人規模の戦闘シーンでは実際に1000人のエキストラを動員するなど、徹底した実写撮影に誇りをのぞかせた。共演したヒメーシュ・パテルも、山や洞窟、水中などスクリーンに映る過酷な場面は「すべて実際に体験したもの」と証言。その経験が作品に直感的な質感を与えていると語った。

オデュッセウスの息子テレマコスを演じたトム・ホランドは、デイモンやハサウェイ、ニョンゴ、そしてノーランという映画界の巨星たちとの仕事を「雲の上にいるような気分」と表現。撮影は「緊張している暇もない」ほどのスピードで進み、作り込まれた世界へ飛び込むだけで役になりきれたと、ノーランならではの現場を振り返った。

一方、『ダークナイト ライジング』『インターステラー』に続くノーラン組参加となったハサウェイは、監督を「知性、常識、人間性を兼ね備えた完璧な存在」と絶賛。その真摯な姿勢こそ、多くのスタッフやキャストが何度も彼と仕事をしたがる理由だと語る。その言葉を裏付けるように、ニョンゴは自分が役の第一候補だと聞くや「脚本を読む必要すらなかった」と出演を即決。初参加のセロンも「役柄が何であれ、彼と一緒に働きたいと思わない俳優はいない」と全幅の信頼を寄せた。

では、なぜこれほど俳優たちに愛されるのか。ノーラン自身は、俳優に困難な挑戦を求める一方、彼らが必要とするものを理解し、常に同じ現場に身を置くことを信条としていると明かす。水中撮影なら、自らも俳優とともに水へ入る。その姿勢もあってか、『インセプション』以来の参加となったエリオット・ペイジは、これほどの超大作でありながら「インディーズ映画を作っているような感覚」だったと回想。史上最大級のスケールと、監督と俳優の濃密な共同作業。その両極が同居する“遠征”の果てに、『オデュッセイア』は完成した。

知ればもっと楽しい!キャストにまつわる4つの逸話(文・平沢薫)

マット・デイモンのスタントダブルは女性?

鎧の巨人族に襲われるシーンは、オデュッセウスたちを小さく見せるために、小柄なスタントダブルたちが活躍。デイモンのスタントを演じたのは、カナダ出身の身長約137cmの女性デヴィン・ダルトンだった。デイモンは彼女の筋肉隆々の腕について「今まで僕が見たことのある中で、最高に素晴らしい腕だった」と絶賛している。

あの映画の撮影をズラしたトム・ホランド

本作に出演するため、トム・ホランドは撮影予定が重なっていた『スパイダーマン』最新作のソニー・ピクチャーズの重役に直接、“気まずい電話”をして『スパイダーマン』の撮影開始を遅らせてもらった。ノーラン監督の撮影は、予定通りの日程で始まって、予定より9日間も早く終了。ホランドは無事、『スパイダーマン』の撮影に間に合った。

絶賛を受けているベテラン勢の演技

「Vanity Fair」はモートンが魔女キルケを演じたシーンの撮影が終わると、スタッフ全員から自然に拍手が起きたとリポート。「LA Times」も「キルケは観客が忘れられない存在」と絶賛。盲目の従臣を演じたレグイザモは「Entertainment Weekly」「The Guardian」などが「感情を揺さぶる演技」と評し、アカデミー助演男優賞候補の可能性を報じている。

下着を豪華にしようとしたロバート・パティンソン

パティンソンは、彼が演じるアンティノオスは「ある種の官能性があり、とにかく快楽が好きだから、下着も豪華で贅沢なはず」と考えて、衣装合わせの時に衣装部に「ヒョウ柄の下着が欲しい。衣装の下からちょっとキラキラした毛皮が見えるようにしたい」とリクエスト。しかし、この要望はノーラン監督に却下され、実現しなかった。

画像: ロバート・パティンソン(NYプレミアは不在) Photo by Eamonn M. McCormack/Getty Images

ロバート・パティンソン(NYプレミアは不在)
Photo by Eamonn M. McCormack/Getty Images

『オデュッセイア』
2026年9月11日(金)公開
アメリカ/2026/2時間52分/配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
監督:クリストファー・ノーラン
出演:マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、サマンサ・モートン、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン

photo by Melinda Sue Gordon © Universal Studios. All Rights Reserved.

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