作品解説はこの1記事でカンペキ!
4週連続で前週比プラスというかつてない現象を巻き起こす
まさか、このような大ブームを誰が予想しただろうか?2018年11月9日に日本で公開された「ボヘミアン・ラプソディ」は興行収入100億円を超え、同年公開作品でナンバーワンの数字を達成。2月現在も上映が続いている。
日本での熱狂が際立っているが、世界各国でも予測以上のヒットを記録した。日本の1週間前に公開された全米でも週末で5000万ドル超えの1位スタートで、最終的に2億ドルを超えるメガヒット。世界興収でも8億ドルをオーバーしており、ミュージシャンの伝記映画、LGBTを大きなテーマで扱った映画で、それぞれ史上最高の数字を叩き出している。
日本での熱狂を身近で味わっていると、こうした記録は「当然」と感じるかもしれない。しかしキャストにトップスターがいるわけでもなく、監督のブライアン・シンガーが撮影途中に降板させられるなど不安要素もあったことを考えれば、この快挙は心が震えるほどに喜ばしい。
成功の予感は、意外に早い時期からあった。2018年4月、ラスベガスで行われたシネマコンで、「ボヘミアン・ラプソディ」の一部映像を観た日本の興行関係者が「これは当たる可能性がある」と急遽、公開スクリーン数を増やすことになったのである。そして6月。ラミ・マレックの取材が行われる際、45分ほどのフッテージが公開されたが、そこには完成版とほぼ同じライヴ・エイドの映像も含まれていた。
クイーンのパフォーマンスを「完コピ」したそのシーンを目にした瞬間、時を超えて1985年のウェンブリー・スタジアムに肉体も魂も移動したように感じた。このまま劇場で上映されたら、観客の多くは同じ感覚に導かれると確信できたのだ。
夏に入ると、劇場側の期待を後押しするように、大量の予告編が流れ始める。もともとクイーンのファンだった40代以上の層が、この予告編に心をわしづかみにされ、ある程度のヒットの予感が現実味を帯びてきた。そして10月に作品が完成。マスコミ向け完成披露試写会に多数の人が入場できない事態も起こり、映画関係者の間でも「ボヘミアン・ラプソディ、来るかも」という空気が充満した。
当初は主演のラミ・マレックのみにオファーされた来日キャンペーンも、他のメインキャストが追加され、勢いに乗せられたマスコミによって、公開直前までネットを中心に「ボヘミアン・ラプソディ」のトピックが駆け巡ることになる。
そして11月9日の公開を迎え、最初の週末が1位は当然として、その後、4週連続で興行収入が右肩上がりという「異常事態」が発生する。この現象は「アナと雪の女王」や「君の名は。」ですらなし得なかったこと!ネットはもちろん、TVのワイドショーでも特集が組まれ、その相乗効果で観客が増加するという、まさに「社会現象」化。年が明けても数字が極端に落ちることなく、年間トップの作品になったのである。
TOPIC1:
韓国では日本以上の熱狂ぶり
アメリカでは日本の応援上映にあたる「シング・アロング(一緒に歌おう)上映」が行われ、クイーンの母国イギリスでも年間チャートで5位という大ヒットを記録したが、日本を含め各国に劣らないほど、いやそれ以上に「ボヘミアン」旋風が吹き荒れているのが韓国。興行収入は約1000億ウォン(100億円)と日本と同等だが、観客動員数が1000万人近くと、日本を上回るペースなのだ。あまりの熱狂ぶりに昨年末には、地上波のTV放送局MBSで、1985年当時の「ライヴ・エイド」の実況映像が3時間枠で放映されたほど。K-POPグループがクイーンの楽曲をカバーし、クイーンの公認フォトグラファーの写真展が開催されるなどブームは加熱した。