文/横森文・タナカシノブ
デジタル編集/スクリーン編集部
「えいがのおそ松さん」
2019年3月15日公開
監督/藤田陽一
脚本/松原秀
声/おそ松:櫻井孝宏、カラ松:中村悠一、チョロ松:神谷浩史、一松:福山潤、十四松:小野大輔、トド松:入野自由 ほか
松竹配給 ©赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
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インタビューその1:藤田陽一監督
藤田陽一監督
アニメ演出家。アニメ製作会社「サンライズ」の制作進行を経て2004年「陰陽大戦記」で演出デビュー。現在はフリー。はじけたギャグ作品の演出に定評があり、TVアニメ「銀魂」「おそ松さん」「クラシカロイド」などの監督を務める。
ここまでクズを肯定してもらえる“ダメ人間賛歌”はほかにない
ーー『おそ松さん』の映画化の経緯を教えてください。
藤田監督「TVシリーズ2期を始める頃、次にやるなら映画がいいよねという案をプロデューサーに出していました。1期、2期で50話、TVでやりたいものを全部作り終えたら、自然と映画向けのアイデアが浮かんでくるって自分に期待してました(笑)。
“過去”というテーマは、TVのスケジュール感では描けないものだし、きっとお客さんも観たいテーマかなと思いました。構造として、6人が成長すると終わっちゃう話なので、童貞ニートの前提を変えずに描くには“過去に戻る”しかない。まぁ、シリーズものの映画では、成長したのに次はなかったことにというのもよくありますけどね(笑)」
ーー制作するうえで、劇場版ならではの難しさや面白さはありましたか?
藤田監督「TVより広い画面に6人が同時に映っていて、それぞれの芝居をしている。単純に観る側の情報量が増やせるということを意識して、TV版よりそういうシーンを多めに作れたかなと思います。醍醐味でもありながら、たくさん描かなければいけないので大変な部分でもありましたけど(笑)。シンプルな線のキャラとはいえ、6人が集まってわちゃわちゃやっているのを、一つの画面でコントロールしなくてはいけない難しさはあります」
ーー主役が6人いるので、バランスよく焦点を当てる難しさもありそうです。
藤田監督「6人だけじゃなく、サブのキャラクターにも1個はちゃんと面白い場所を作ってあげたいと思っています。真ん中にいる6人のバランスを考えすぎると話が展開していかないので、逆に意識せずに作ってみて後から削るスタイルです。ボケ続けるばかりで真面目なキャラが一人もいないんでね(笑)。
コンテチェックの時期に『デッドプール2』を観たのですが、あれってボケなきゃ1時間くらいで終わる話ですよね。後半“いい加減進めよ!”って部分もありましたが、ボケてばかりで話進まないけど意外とこういう展開でも観られるなって思いました」
ーー『おそ松さん』がここまで人気が出た理由、魅力はどこにあると思いますか?
藤田監督「キャラクターを好きになってほしいとは思ってましたが、正直ここまで人気が出るのは予想外でした。クズでニートで童貞を肯定して、本人たちが楽しいならいいじゃないって。ここまで優しい目で観てもらえる“ダメ人間賛歌”はほかにはないですよね」