マット・リーヴス (『THE BATMAN-ザ・バットマン-』監督)
“ 楽しいのは、皆さん全員にすべてがリアルであると思わせることなんだ ”
マット・リーヴス監督 プロフィール
1966年4月27日アメリカ・ニューヨーク州生まれ。長編監督デビューは1996年の『ハッピィブルー』。代表作に『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)、『モールス』(2010)、『猿の惑星: 新世紀(ライジング)』(2014)、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2016)など。映画監督のJ・J・エイブラムスとは幼なじみで度々タッグを組んでおり、バットマンの新作アニメ「Batman: Caped Crusader(原題)」でも製作総指揮に両名が名を連ねている。
── 本作は若いブルース・ウェインのストーリーにフォーカスしています。どういったアプローチをしましたか?
初期のブルース・ウェインをやりたいとは思っていたけど、これまでの素晴らしい「バットマン」映画で描かれたブルース・ウェインのオリジンについてはやりたくなかった。僕は皆さんに犯罪学的な実験をしている時期の彼に出会って欲しかったんだ。それで、バットマンになって2年目を描くことに決めた。
アメリカでの最初の予告編の一つに、ニルヴァーナの「サムシング・イン・ザ・ウェイ」が入っている理由は、それが実際、脚本の中にあるからなんだ。彼にどこかロック・アンド・ロールの美学が宿っているというアイディアはね。ちょっと隠遁者っぽい人で、彼が自分の居間でジャム・セッションすると、アンプの音が老朽化したウェイン家の豪邸中に響き渡るんだ。そういった感じなんだよ。
僕は「これが自分が思い描くバットマンのバージョンだ」と思った。そのことが、僕をロバート・パティンソンに引き寄せた。その領域に入る役者たちを見始めた時、「こういった自己破壊的ロック・アンド・ロール美学の人にはなにか惹きつけられるものがある」と感じ、そういったことがロブに繋がった。彼がそのキャラクターを理解してくれたのを見て、僕はとても興奮させられたよ。
── 今回のバットマンとゴッサム・シティに影響を与えたコミックはありますか?
僕にとって魅力的だったのは「バットマン」がノワール物として始まったことだった。原点はボブ・ケインとビル・フィンガーのコミックスのトーンだ。僕がとても惹かれたのは心理学や暗さを掘り下げる作品。ダーウィン・クックの「バットマン:エゴ」は重要な作品だったね。彼が内面の葛藤を抱えているのを見ることが出来るんだ。彼は基本的にバットマンという獣と戦っていることが分かるよ。
それと「バットマン:イヤーワン」は本当に大きな発見で夢中になって読みあさった。「バットマン:ロング・ハロウィーン」もとても重要だったな。長く続く連続殺人についての話だからね。僕の脚本の先生で、僕にライターになるべきだと言った人はジェフ・ローブ(元マーベル・テレビジョンのエグゼクティブ)なんだけど、彼が「ロング・ハロウィーン」のライターなんだ。可笑しいよね(笑)。
── 撮影と特殊効果についても教えていただけますか。
僕は映画の中のことが本当に起きていると信じてもらいたいんだ。いつもやろうとしているのはビジュアル・エフェクトをつける際、できるだけプラクティカル・エフェクト(現場で実際にやるエフェクト)を混ぜること。この映画の中にも、実際にやった多くのものがミックスされている。スタントや本物の爆発とか、実際にやれなかったこともね。そのミックスが、あるレベルの信憑性や現実感を作り出しているといいな。
僕らはビジュアル・エフェクトを見ることをとても当たり前だと感じていて、ほとんど何もリアルなものはないと仮定している。例えば予告編では、僕はとてもリアルに感じられるバットモービルのチェイスシーンをやりたかった。でも当然、そこで起きることのいくつかは実際にやれないものがある。人が死んでしまうから(笑)。だから、それはやらなかったけど、僕らはカメラを車にしっかり固定した。まるで『ブリット』のようにね。
バットモービルは復讐の象徴なんだ。スティーヴン・キングの「クリスティーン」の物語のように。車そのものが恐怖を作り出す。だからバットモービルが炎を通過してジャンプするのをやりたかったんだ。予告編で見ることが出来るよ。ペンギンがバックミラーを見る時、バットモービルが炎を飛び越えて出てくるんだ。その部分は多分CGじゃないといけないだろうと予想していたけど、ロブ・アロンゾ(セカンド・ユニット・ディレクター)とドミニク・タオイー(スペシャル・エフェクト・スーパーバイザー)は「出来る」と言ったんだ。だから、そのショットは本物なんだ。
映画の中には、皆さんがビジュアル・エフェクトだとは全く思わないものがたくさんある。一方で、実際にはリアルだけど、ビジュアル・エフェクトだと思うものがある。そこで楽しいのは、皆さん全員にすべてがリアルであると思わせることなんだ。
Photo by Matt Easton