「くまモン」の生みの親であり、映画『おくりびと』(08)の脚本家として知られる小山薫堂氏。その小山氏が日本特有の入浴行為を文化の一つとして捉え、2015年に提唱した「湯道」をテーマに完全オリジナル脚本で映画化したのが『湯道』です。銭湯を営む実家を飛び出したものの、うまくいかず舞い戻ってきた主人公・三浦史朗を演じるのは生田斗真。銭湯を継いだ弟・三浦悟朗を濱田岳が演じます。監督は『HERO』『マスカレード』シリーズを手掛け、群像劇を得意とする鈴木雅之。公開を前に小山薫堂氏と鈴木雅之監督にお話をうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

“男湯”“女湯”という考え方がシンメトリー

──「まるきん温泉」のセットは京都の松竹撮影所に190坪を超える広さでセットを作られたとのこと。番台や浴室は様々な角度から映し出され、見応えがありました。

小山:監督はシンメトリーに撮りたくて、あのセットを作ったんですよ。監督はシンメトリーがお好きですから。

鈴木:男湯のことは女性にはわからない。同じように、女湯のことは男性にはわからない。でも番台に座っている人だけは知っている。面白い空間ですよね。

銭湯って男湯も女湯も同じように作っていますから、番台から見てシンメトリーな世界って気がします。“男湯”“女湯”って考え方がそもそもシンメトリーですから。温泉にはそれがありません。

画像: 銭湯「まるきん温泉」セット (男湯)©2023映画「湯道」製作委員会

銭湯「まるきん温泉」セット (男湯)©2023映画「湯道」製作委員会

──銭湯の浴槽が真ん中にあって、面白い設計だと思いました。

小山:関西では真ん中にお風呂があることが多いんですよ。

鈴木:東京にはあまりないですね。銭湯の設計は地域によって大分違います。

──湯道会館のセットは侘び寂びといった日本の和の文化が凝縮されていた気がします。小山さんは家元として何かリクエストはされましたか。

小山:下は敷き瓦がいいですと言ったくらいで、特にリクエストはしていません。

鈴木:シナハンでいくつも見てきたものの中からイメージをすり合わせていきました。架空のものですから、とにかく象徴的なものにしようと思っていました。

画像: 湯道会館のセット ©2023映画「湯道」製作委員会

湯道会館のセット ©2023映画「湯道」製作委員会

──作品の中で角野卓造さんが演じられた家元が湯に入りましたが、作法の1つ1つに名前が付けられているのに驚き、作法の中の「衣描き」には感動しました。

小山:いくつかは元々ありましたが、お風呂に入るときにそれをしなくてはいけないと強要はしていません。「縁留」と「衣描き」は今回、映画化する際に考えました。

鈴木:そうでしたっけ(笑)。

小山:そうですよ(笑)。

鈴木:「衣描き」の撮影は大変でしたが、狙い通りになってよかったです。

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