前編に続き、熾烈なデッドヒートが繰り広げられそうな4つの演技部門の予想をお届け。 初オスカー候補が20人中16人で、アジア系俳優、アイルランド俳優たちが大量候補になっています。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

主演女優賞
ミシェル・ヨーに待ったをかけるケイト・ブランシェット

まず最初に挙げられるのが今回の台風の目『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でヒロイン、エヴリンを快演したミシェル・ヨーで、マレーシア出身の彼女はアジア系女優としてこの部門初受賞を果たすかもしれない。本作は最初はジャッキー・チェンを主人公にと脚本が書かれていたが、多忙で出演できず、彼の妻役予定だったミシェルが主人公になることに。運命のめぐりあわせもあって得たこの役で各賞を総なめにしている彼女が、アジア女優初の主演賞ウィナーとなる本命と言えそうだが、そこに待ったをかけるのが『TAR/ター』のケイト・ブランシェット。世界的な名声を得ているオーケストラの女性指揮者のパーフェクトぶりを、これまたパーフェクトな演技力で体現するケイトは、同業者ならついオスカーを差し出したくなるような入魂の役作り。ケイトはこれまで助演賞と主演賞を一度ずつ受賞しているが、三度目も十分あり得そうな出来栄えだ。

また今回大きな騒動を呼んだのが『To Leslie』(2022)のアンドレア・ライズボローの超サプライズ・ノミネート。下馬評にも殆んど挙がらなかった彼女が指名を受けたのは、彼女の演技を気に入ったセレブたちが仲間に呼びかけるSNSを使ったキャンペーンを行ったためで、投票規約に違反しているのでは? という声が上がり、候補抹消になりかけたもの。結局彼女の候補入りは取り消されなかったが、キャンペーン活動の今後に課題を残した(アンドレア受賞の可能性が急上昇するというおまけも)。

『フェイブルマンズ』のミシェル・ウィリアムズの候補入りもちょっとしたサプライズ。彼女は助演賞部門で候補になると言われていたが、蓋を開ければ主演部門に入っていたのだ。そして『ブロンド』(2022)のアナ・デ・アルマスも作品の不評をものともせず候補入りして演技自体が優れていることを証明した。

助演女優賞
アンジェラ・バセットがMCU映画作品で初の受賞者に?

助演男優賞同様、この部門も鉄板的な本命が存在する。それは『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のアンジェラ・バセットで、彼女は1993年の『TINA ティナ』で主演女優賞候補になって以来、約30年ぶり2回目のノミネート。ゴールデングローブ賞など前哨戦の成果からしても今回は受賞が濃厚。また彼女はマーベル・シネマティック・ユニバース映画に出演してオスカー演技賞候補になった最初の人物にもなった。

記録という面では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のヒロインの娘を演じるステファニー・スー(中国出身)、『ザ・ホエール』の看護師を演じるホン・チャウ(タイ出身)がノミネートされたことで、同じ演技部門の候補者にアジア系俳優が2人入るのは、史上初。また『エブエブ』からはステファニーとジェイミー・リー・カーティスの2人が候補入り。助演男優部門では『イニシェリン島の精霊』から2人が入っているので、二つの演技部門で一つの映画からダブル・ノミネートされるのは51年ぶりとか。

と記録尽くしの第95回だが、ジェイミーは長いキャリアの中でオスカー候補は初。彼女の父トニー・カーティス、母ジャネット・リーもそれぞれ一度候補になっており、めでたく親子3人そろってオスカー・ノミニーとなった。受賞すればカーティス家で初のウィナーになる。ただ本命アンジェラの対抗となるのは『イニシェリン島の精霊』のケリー・コンドンになりそう。主人公の知性的な妹を演じるケリーはロンドン映画批評家賞などで助演賞を受賞。英国本国ではアンジェラを上回る評価で、今後の活躍が期待できそうだ。

これら演技部門の行方も現時点ではまだ予想中盤の段階。2月26日開催(現地時間)の全米俳優協会賞が発表されると、実際の本命がわかってくるかもしれない。(執筆時点では発表前)

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