第95回アカデミー賞 主演男優賞ノミネート
A24も注目の新鋭監督が描く、大切な人との愛おしい記憶の物語
これが長編デビュー作となるスコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ監督が自伝的な要素もまじえて描く、若き父親と娘のひと夏の物語。今年のアカデミー賞で旋風を巻き起こした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)など話題作を連発するスタジオA24が北米配給権を獲得し、英紙ガーディアンをはじめとする複数のメディアが2022年のベスト映画に選出した。
11歳の少女ソフィが若き父親とふたりきりで過ごした宝物のような夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る。クイーン&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」、ブラーの「テンダー」等のヒットソング、1990年代のアイテムやファッションが全編に散りばめられている。
父親役を演じるのは、本作でアカデミー賞主演男優賞の初ノミネートを果たしたポール・メスカル。思春期のソフィ役には半年にわたるオーディションで800人の中から選ばれた新人フランキー・コリオ。『ムーンライト』(2016)の監督バリー・ジェンキンスが脚本に惚れこみ、プロデューサーに名を連ねている。
【あらすじ】若き父親とふたりきりで過ごした かけがえのないひと夏の記憶
11歳の夏休み、ソフィ(フランキー・コリオ)は普段は別々に暮らす父カラム(ポール・メスカル)とトルコのリゾート地を訪れる。間もなく31歳になるカラムはソフィの兄と間違えられるほどに若く見える。娘思いの優しい父親である。
旅行のために最新の家庭用ビデオカメラを入手していたカラムは、ソフィの背中に入念に日焼け止めを塗り、タバコは体に悪いと切々と語り、太極拳の護身術を教える。母親との暮らし、学校生活について話をしながら、かけがえのない親密な時間を過ごすふたり。だが、骨折したという腕にはめたギプスを取り外すとき、ままならない状況に陥ったとき、カラムの苦悩が衝動的に時折顔を見せる。
父の心の内を知るには、そのときのソフィは幼すぎた。現地で顔見知りになった年上のティーンたちがお酒を飲んだり、キスをし合ったりする姿に興味津々の思春期にいるソフィは、ちょっとした自立心と反抗心から、些細なことでカラムと口喧嘩をしてしまう。
登場人物紹介
ソフィ(フランキー・コリオ)
思春期真っ只中の少女。若き父とトルコのリゾート地で夏休みを過ごすことに。
カラム(ポール・メスカル)
31歳の男性として生きづらさを抱えながらも、娘への深い愛情を見せる父親。
「アンダー・プレッシャー」が重要な一曲に
1990年代当時の衣装や小道具が散りばめられた本作の中で特に強い印象を残すのが音楽。監督が脚本を執筆中の数年間、聴きながら作業していたという1990年代のものを中心に選曲された。当時の感覚を持ってもらうため、そのプレイリストは主演の二人にも共有されたという。
当初は使う予定はなかったというクイーンとデヴィッド・ボウイの共作「アンダー・プレッシャー」(こちらは1981年にリリースされた楽曲)は、登場人物の語られない心の内が歌詞と共鳴し、重要な役割を果たす一曲になった。
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『aftersun/アフターサン』
2023年5月26日(金)公開
イギリス=アメリカ/2022/1時間41分/配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:シャーロット・ウェルズ
出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール
© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022