水道料金を滞納する家庭の水を停める業務【=停水執行】に就く、市の水道局職員が心の渇きにもがく中で、育児放棄を受ける幼い姉妹と出会い、ささやかな幸せを求めて本当の自分を取り戻してゆく。映画『渇水』は1990年文學界新人賞受賞、103回芥川賞候補となって注目を浴びた、河林満の同名小説を刊行から30年の時を経て映画化したものです。映画監督・白石和彌が初プロデュースした意欲作で、主人公の岩切を生田斗真が演じています。企画を立ち上げた髙橋正弥監督に映画化のきっかけや作品への思い、生田斗真のキャスティングについて語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

シーンを重ねて見えてくる主人公の表と裏

──岩切の過去や状況を考えると姉妹の母親に共感するところがあってもいいのかなと思いました。

姉妹の母親は原作にはあまり出てこないので、映画で姉妹の家庭を描くときに、門脇さんが演じた小出有希という人の人生と生き方を大分足して描きました。岩切が姉妹の家庭に入り込んでいけば、そういうドラマが作れたかもしれませんが、シーンを追いかけていくにつれて主人公の表と裏が見えてくるような構図にしたかったので、あえて姉妹の家庭に岩切の思いを入れず、ドライに見せていったのです。

むしろ磯村さんが演じた木田は「水を止める」ということに馴染んでないこともあり、姉妹に入れ込み、岩切から諭されます。この作品における木田の役割は非常に大事で、何か憤ってみせるということを岩切の横でしっかりやっていただきました。

画像: シーンを重ねて見えてくる主人公の表と裏

──この作品を通じて伝えたいことについてお聞かせください。

原作で描かれている1990年代の貧困や格差は2020年代になっても何も解決しておらず、この先もなくならないのかもしれません。それでも、未来を担う子どもたちが人生に不安を感じないように、さまざまな問題を解決する努力をすることこそが大事。それを本作の一端から感じ取っていただけたらと考えています。

──これからご覧になる方にひとことお願いします。

爽快・痛快なエンタテインメント映画でも、心ときめく恋愛映画でも、ハラハラドキドキのアクション映画でもありません。とても小さな小さな世界の物語ですが、生田さんを始めとするキャストやスタッフが脚本に惚れ込んで参加してくれ、その想いや気持ちが充分に映像や演技に反映されています。そこを感じながらご覧いただければと思います。

<PROFILE>
監督:髙橋正弥
1967年、秋田県出身。根岸吉太郎、高橋伴明、相米慎二、市川準、森田芳光、阪本順治、宮藤官九郎作品で助監督としてキャリアを重ねつつ、映画『RED HARP BLUES』(2002)、『月と嘘と殺人』(2010)、ドラマ「マグマイザー」(スカパー!、2017)などで監督を務める。2023年初夏、監督最新作『愛のこむらがえり』が公開予定。

『渇水』2023年6月2日(金)全国公開

画像: 映画『渇水』60秒本予告【6月2日(金)公開】 www.youtube.com

映画『渇水』60秒本予告【6月2日(金)公開】

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<STORY>
日照り続きの夏、市内には給水制限が発令されていた。市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)の業務は、水道料金滞納家庭や店舗を回り、料金徴収と、水道を停止すること【=停水執行】。貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々であった。俊作には妻と子供がいるが別居中で、そんな生活も長く続き、心の渇きが強くなっていた。ある日、停水執行中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会う。自分の子供と重ね合わせてしまう俊作。彼は自分の心の渇きを潤すように、その姉妹に救いの手を差し伸べる―

『渇水』
原作:河林満「渇水」(角川文庫刊)
監督:髙橋正弥
脚本:及川章太郎
音楽:向井秀徳
企画プロデュース:白石和彌
出演:生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、山﨑七海、柚穂/宮藤官九郎/宮世琉弥、吉澤健、池田成志、篠原篤、柴田理恵、森下能幸、田中要次、大鶴義丹/尾野真千子
配給:KADOKAWA
2023/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ/100分
©「渇水」製作委員会
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/
2023年6月2日(金)全国公開
※山崎七海の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
※高橋正弥の高は、はしごだかが正式表記

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