過去のある出来事から「恋愛はしない」と宣言する26歳のOLが10歳年下の高校生の真っすぐな想いに触れ、現実と向き合い、一歩を踏み出す。映画『水は海に向かって流れる』は田島列島の同名コミックの実写映画化です。主人公の榊千紗を演じるのは、広瀬すず。感情を表に出さない大人の女性をクールに演じています。榊に淡い想いを寄せる直達役に抜擢されたのは大西利空。子役として幼い頃からキャリアを積み上げ、満を持して等身大の高校生役を演じます。脚本開発にも関わった前田哲監督に作品への思いやキャストについて、語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

ちょっとビターな感じを残しつつ、爽やかな印象のラストに

──作品に関わることになったきっかけからお聞かせいただけますか。

プロデューサーの関口さんから監督オファーのお手紙をいただき、映画化をするという視点で原作を読みました。

田島先生の独特なユーモアと間が面白く、描かれているキャラクターは非常に魅力的でした。マンガの世界から映画のスクリーンに登場人物たちが現れた姿を見てみたいと感じました。どう映像化するのかを考えるのが楽しく、非常にやり甲斐があると思いました。

プロデューサー2人と脚本家の大島(里美)さん、僕の4人でプロット作りから始め、それを元に大島さんに脚本を書いていただき、2週間くらいごとに、また打ち合わせをするということを繰り返して脚本を練っていきました。

画像: 前田哲監督

前田哲監督

──原作からエピソードを選ぶ際に意識したことはありましたか。

この作品は16歳で時間が止まっている榊が一歩踏み出すまでを描いています。榊の人生がどうなっていくのかというところをメインに考えつつ、榊と直達の関係性に楓が絡んでくる青春映画の側面もある。映画はちょっとビターな感じを残しつつ、爽やかな印象のラストにしました。

画像: ちょっとビターな感じを残しつつ、爽やかな印象のラストに

──榊が料理をするシーンが何度も出てきます。

料理に集中するといろんなことを忘れられるので、ある種の逃げ場になる。榊は料理を作ることで今、抱えている感情を落ち着かせるという行為を繰り返していたのです。映画的には、いつもクールでちょっと不機嫌な印象とは裏腹に、よく作りよく食べるというギャップが親しみやすさとして映し出されますし、シェアハウスに暮らす住人たちとのコミュニケーションツールの役目も果たしています。

今回は食事をしっかり映画の中に取り込んで、美味しそうに見せましょうというのがプロデューサーとの最初の決め事でした。それをうまく、彼女の感情の流れとリンクさせていきました。

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