ちょっとビターな感じを残しつつ、爽やかな印象のラストに
──作品に関わることになったきっかけからお聞かせいただけますか。
プロデューサーの関口さんから監督オファーのお手紙をいただき、映画化をするという視点で原作を読みました。
田島先生の独特なユーモアと間が面白く、描かれているキャラクターは非常に魅力的でした。マンガの世界から映画のスクリーンに登場人物たちが現れた姿を見てみたいと感じました。どう映像化するのかを考えるのが楽しく、非常にやり甲斐があると思いました。
プロデューサー2人と脚本家の大島(里美)さん、僕の4人でプロット作りから始め、それを元に大島さんに脚本を書いていただき、2週間くらいごとに、また打ち合わせをするということを繰り返して脚本を練っていきました。
──原作からエピソードを選ぶ際に意識したことはありましたか。
この作品は16歳で時間が止まっている榊が一歩踏み出すまでを描いています。榊の人生がどうなっていくのかというところをメインに考えつつ、榊と直達の関係性に楓が絡んでくる青春映画の側面もある。映画はちょっとビターな感じを残しつつ、爽やかな印象のラストにしました。
──榊が料理をするシーンが何度も出てきます。
料理に集中するといろんなことを忘れられるので、ある種の逃げ場になる。榊は料理を作ることで今、抱えている感情を落ち着かせるという行為を繰り返していたのです。映画的には、いつもクールでちょっと不機嫌な印象とは裏腹に、よく作りよく食べるというギャップが親しみやすさとして映し出されますし、シェアハウスに暮らす住人たちとのコミュニケーションツールの役目も果たしています。
今回は食事をしっかり映画の中に取り込んで、美味しそうに見せましょうというのがプロデューサーとの最初の決め事でした。それをうまく、彼女の感情の流れとリンクさせていきました。