何をするにも1秒早いハジメと1秒遅いレイカ。ハジメが失った1日をハジメとレイカそれぞれの視点から描く。岡田将生と清原果耶がW主演を務める映画『1秒先の彼』はせっかちなハジメとのんびり屋・レイカのシンプルでピュアなラブストーリー。チェン・ユーシュン監督の台湾映画『1秒先の彼女』(2020)のリメイクです。『天然コケッコー』(2007)の山下敦弘監督が脚本家・宮藤官九郎と初タッグを組みました。公開を前に山下監督のインタビューを敢行。オリジナル版との違いやキャストについてなど、語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)
早くて質の高い仕事をする脚本家・宮藤官九郎
──本作は台湾映画『1秒先の彼女』(2020)のリメイクですが、オリジナル版をご覧になっていかがでしたか。
ひとことで言うと無邪気で可愛らしい。チェン・ユーシュン監督の遊び心を感じつつ、お人柄が出ている作品だと思いました。
果たして、チェン・ユーシュン監督がお持ちの資質が僕にあるのか。俺は意外と気が小さく、遊び切ることができないので、どこまでオリジナル版のように“映画全体で遊んでいる感覚”のある作品にできるのか、ちょっと不安ではありました。
──脚本を宮藤官九郎さんにお願いしたのは遊び心を期待してのことでしょうか。
宮藤さんは遊び心のある方ですから、おっしゃる通り、そこに期待がありました。
それだけでなく、宮藤さんには『ぼくのおじさん』(2016年)などに俳優として出演していただいたことがあって、いつか宮藤さんの脚本で映画を撮ってみたいと思っていたのです。宮藤さんがオリジナル版を気に入っていらしたと聞き、「リメイクというチャレンジに一緒に取り組んでいただけませんか」とお願いしました。
──脚本家としての宮藤さんはいかがでしたか。
仕事が早いんです。しかも質も高い。「こういう方向で直してください」とお願いするとそこからの直しがあっという間でした。
映画ってまずはイメージしながら脚本を書きますが、実際にロケ場所が決まっていくとできないことが出てくる。それを最終的に調整していくのですが、今回はロケ場所が多い上に、いろんな設定もあるので、かなり調整が必要でした。しかし、宮藤さんは京都という場所と2人のキャストを活かしながら、さらに面白くしてくれたのです。