感じたままに演じてもらうことが大事
──レオを演じたエデン・ダンブリン、レミを演じたグスタフ・ドゥ・ワエルは映画初出演とのことですが、キャスティングの決め手を教えてください。
「エデンは電車の中で見つけました。友だちとお喋りしている様子を何気なく見ていたら、鋭い表現力が感じられ、豊かな資質を持っていることがわかったのです。思い切って彼に話しかけて、オーディションを受けるよう誘いました。すると彼は『Girl/ガール』で主役を演じたビクター・ポルスターと同じダンススクールに通っていたので、私を知っていたのです。
キャスティングの過程でたくさんの子どもたちに会い、その中から40人を選んで、ペアになってオーディションを受けてもらいました。
感情を没入させるシーンのペアワークをしたとき2人はすぐにそこから抜け出し、子どもとは思えない成熟ぶりを見せました。ほかにも才能を見せてくれたペアはありましたが、彼らはそれに勝る何か特別なものを持っているのを感じたのです。
しかも、最後に出してもらったアンケートに『世界でいちばん好きな人』という質問があったのですが、エデンはグスタフの名前を書き、グスタフはエデンの名前を書いていました。もちろんそんなことはないので、お互いの名前を記入すれば、私たちに印象を残すことができると気がついたのだと思います。その聡さに驚きました」
─エデンとグスタフとはどのように役作りをしましたか。
「台詞を一語一句間違えずに言うよりも、物語がどう展開し、演じる役にどんなことが起きるのかを知った上で、感じたままに演じることが大事だと思っています。そうすることで、初めて生き生きとした作品になるのです。ですから、脚本を読むのは一度だけ。現場では役になったつもりで過ごしてもらい、ふっと『なぜレオはそこでレミを待たないんだろう?』と尋ねたりしました。こちらからは答えを言いません。役を自分の中に落とし込んでほしいのです。もちろん、難しいシーンの場合はサポートしますけれどね。
私も彼らのことをよく知るように努めました。エデンは悲しいときにトム・オデールを聴くことを知り、感傷的な場面では『トム・オデールの曲を聴く?』と聞き、『聴きたい』と言われれば、トム・オデールの曲を掛け、エデンがレオの感情に入っていきやすいようにサポートしました」