親友と同じ中学に進学した少年が親密さをクラスメイトから揶揄われ、親友と距離を置いてしまう。そんな思春期ならではの行動が引き金となって悲劇が起きる。映画『CLOSE/クロース』は前作『Girl/ガール』で第71回カンヌ国際映画祭カメラドールを受賞し、鮮烈なデビューを飾ったルーカス・ドン監督の長編2作目。監督自身がかつて抱いた葛藤や不安な想いを瑞々しく繊細に描いている。ジャパンプレミアを機に来日したルーカス・ドン監督に作品に対する思いを語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

自身の内面をフックにして多くの人が共感できる作品を撮る

──ラストの自然光のきらめきに希望を感じました。意識して、自然光をライティングに使っているのでしょうか。

「撮影監督のフランク・ファン・デン・エデンとは『Girl/ガール』でも組んでいますが、どちらの作品でも自然光を重視して、俳優たちがいる空間に照明を置かないと決めていました。照明を配置するとしても、窓や他の空間を通すことで、俳優たちがセットではなく、本当に住んでいる空間にいるという感覚になるようにしたかったのです。フランクは現実とスタイルの組み合わせが非常にうまく、自然光を使いつつ、途中で照明を加えてもそれを感じさせないのです。

映画は夏から始まり、秋を経て冬、そして春へと進んでいきます。季節に応じて日差しも変わっていきます。夏のまぶしい日差しのもとで2人は走り回り、1つのベッドで一緒に眠っていました。季節が秋へと移ると、日の光は陰影のあるものへと変わります。そして映画の後半、レオの葛藤が強くなっていくにつれて、画も暗くなり、以前ほど少年たちに光が降り注がなくなります。光はレオの心情に沿わせつつ、美的な要素を作品に加えてくれました」

──監督が扱うテーマはとても同時代的ですが、同時にご自身の世界感とすごく深いところで繋がっている気がします。フィルムメーカーとして、どうあるべきと考えていらっしゃいますか。

「私は『タイタニック』(1997)が大好きだった母を通して映画を知り、その後、映画の勉強をするようになりました。当時は自分自身ではない、何か別の存在になりたいと思っていて、周りの人たちの行動を研究し、彼らのようになるための努力していました。きっと現実逃避から自分には関係のない映画を求めていたのでしょう。

ただ、自分の内面を描いた映画を作りたいと思うようになるまで、それほど時間はかかりませんでした。今は自分自身を変えるのではなく、抱えてきた問題をフックにして多くの人が共感できる作品を撮ることで、アイデンティティの違いで分断されている人たちを繋ぎたいと考えています。

エンターテインメント性の高い作品を見るのは好きですが、自分で撮るとなったら、それだけでは心が満たされないのです」

<PROFILE>
監督・脚本:ルーカス・ドン

1991年ベルギー、ヘント生まれ。
ヘントにあるKASKスクールオブアーツ卒業。在学中に制作したショートフィルム『CORPSPERDU』(12)が数々の賞に輝き、2014年に製作した『L’INFINI』は2015年度のアカデミー賞短編部門・ノミネート選考対象作品となった。2018年に『GIRL/ガール』で長編デビュー。第71回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)受賞をはじめ、数々の映画賞に輝いた。本作では自身の経験を基に少年たちの友情と悲劇を描き、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門グランプリ受賞をはじめ、第95回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされるなど世界各国の映画賞を席巻した。

『CLOSE/クロース』7月14日(金)より全国公開

画像: 7月14日(金)公開 『CLOSE/クロース』|本予告 www.youtube.com

7月14日(金)公開 『CLOSE/クロース』|本予告

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<STORY>
花卉農家の息子のレオと幼馴染のレミ。昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべる。24時間365日ともに時間を過ごしてきた2人は親友以上で兄弟のような関係だった。13歳になる2人は同じ中学校に入学する。入学初日、ぴったりとくっついて座る2人をみたクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。「親友だから当然だ」とむきになるレオ。その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。

ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。毎日一緒に登下校をしていたにも関わらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。二人はその場で大喧嘩に。その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていく。ある日、課外授業にレミの姿はなかった。心ここにあらずのレオは、授業の終わりに衝撃的な事実を告げられる。それは、レミとの突然の別れだった。移ろいゆく季節のなか、自責の念にかられるレオは、誰にも打ち明けられない想いを抱えていた…。

<STAFF&CAST>
監督:ルーカス・ドン(『Girl/ガール』)
脚本:ルーカス・ドン、アンジェロ・タイセンス
出演:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ
2022年/ベルギー・オランダ・フランス/104分/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/原題:Close/字幕翻訳:横井和子/G
配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES
© Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
公式サイト:https://closemovie.jp/

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