親友と同じ中学に進学した少年が親密さをクラスメイトから揶揄われ、親友と距離を置いてしまう。そんな思春期ならではの行動が引き金となって悲劇が起きる。映画『CLOSE/クロース』は前作『Girl/ガール』で第71回カンヌ国際映画祭カメラドールを受賞し、鮮烈なデビューを飾ったルーカス・ドン監督の長編2作目。監督自身がかつて抱いた葛藤や不安な想いを瑞々しく繊細に描いている。ジャパンプレミアを機に来日したルーカス・ドン監督に作品に対する思いを語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

レッテルを貼ることでわかったような気になる人が多い

──本作の物語の着想のきっかけからお聞かせください。

「前作『Girl/ガール』では身体における外面と内面の葛藤に焦点を当て、社会的規範やレッテル、固定観念にまみれた社会で自分らしく生きることの難しさとアイデンティティについて描きました。その後も“周りに人からどのように見られているか”、“そのことがどのような葛藤をもたらすのか”について、考え続けていたのです。

ルーカス・ドン監督

そんなある日、私が生まれ育った村にある小学校を訪ねる機会があり、今は校長になっている恩師の一人と話しているうちに、当時の辛かった記憶が蘇ってきました。幼かった頃、女々しい私は男の子から揶揄われることが多く、男の子のグループにも、女の子にグループにも居場所を見つけられなかったのです。それでもどこかのグループに属したいという気持ちがあり、大事な人との関係性を壊してしまった。それが後からどんな影響を及ぼすかについて、その頃は分かっていませんでした。そこを出発点にしたのです。

私の頭の中に2つのイメージが思い浮かびました。ひとつは生命、優しさ、色彩についての解放感。これは花畑が広がる野原へと走り出すシーンで表現しました。もう1つは力を象徴する空間。これは男性性に関連付けられる場所で、何か残酷なもの。作品ではアイスホッケーが象徴しています。映画の前半で無邪気さと親密さを映し出し、後半ではそれらを喪失することで、この矛盾する2つを表現し、この映画全体のドラマトゥルギーになっています」

──脚本の執筆はスムーズに進みましたか。

「私は脚本を書いて何かを表現するのが好きですが、うまく表現できず、煮詰まってしまうこともあります。脚本の執筆中は気持ちのアップダウンがかなり激しいです。

この作品のテーマは私が長年抱えてきた問題ですが、映画としてみなさんに見ていただく以上、多くの方が共感できるものにしなくてはいけません。そこに苦心しました。私たちは誰でも、幼いながらに責任を感じたり、友だちに裏切られて心を痛めたりしたことがあるはずです。そこを起点にして、自分自身の問題でありながら、さまざまな世代の人が共有できるものを作り出しました」

画像: レッテルを貼ることでわかったような気になる人が多い

──センシティブなシーンがありますが、観客がどう受け止めるのか、不安はありませんでしたか。

「私たちの社会は、親密さをセクシュアリティという視点で捉えがち。2人の少年が一緒にベッドに横たわっているのを見ると、すぐに『彼らはゲイなのか』と思ってしまいます。

しかし、この作品は、彼らのセクシュアリティについて描いているのではありません。2人の親密さを周りの人がどう見ているのか、それをコード化して、レッテルを貼ることでわかった気になる人がいかに多いかを描いています。

偏見を持たれないよう、慎重に作っていますが、観客がどう受け止めるかは自由です。ただ、レッテルを貼られて苦しむ人をたくさん見てきました。この映画を見て、そのことに気づいてほしいと思っています」

──「食欲がない」とレミやレオがいうシーンが何度か出てきますが、彼らのSOSのサインだったのですね。

「思春期になると、子どもは自分自身の内面において、それまで気がつかなかったことに気づいていきます。しかし、周りの人間がそのことを完全に理解してあげるのは難しい。だから子どもは孤独感に苛まれます。

私には子どもがいないので、正直、親が子どもに接することがどのくらい難しいのか、よくわかりません。脚本を書くために、レミの母親と同じような経験をした母親にたくさん会って話を聞きました。その中の1人は率直な思いを手紙に書いてくれたのです。そこには、彼女が責任感から自分を責めてしまい、悲しい出来事をきちんと悲しまなかったために今でも囚われ続けていることが書かれていました。レミの母親はそれにヒントをもらっています」

This article is a sponsored article by
''.