人間以外の生き物にとって大事なことは何なのかも考える
──アオイヤマダさんが演じた濡れる女は水中で舞を披露します。くねらした体にまとわりつくように漂う衣装が素晴らしかったです。
衣装の川上須賀代さんは水の中での布の抵抗感をお風呂で確認してくださったのですが、動きも水の深さも違いますから、アオイさんにやっていただかないとわからない。プールを使って、衣装合わせと動きの確認を兼ねたものを行いました。どれくらいの量ならまとっていても動けるものなのか。少なすぎると露出が多くなってしまいますし、何より布の動きとしての美しさがなくなってしまいます。その辺りのバランスは水に入ってみるまで分からなかったのです。試行錯誤しつつ、川上さんに相談しながら作っていきました。

ダイビングの訓練用のプールで撮影しましたが、このシーンが撮り終わったときには感動しました。何といってもアオイさんのパフォーマンスが素晴らしかったし、衣装との兼ね合いも上手くいき、周りにいたスタッフがみな拍手していました。
──萱島も一緒に水の中にいましたが、そのシーンは別撮りでしょうか。
アオイさんが踊っているところと竹野内さんのところのテイクは別ですが、一緒に入って撮っています。
竹野内さんは泳ぎが得意で、いつまででも潜っていらっしゃる。アオイさんをサポートしてくれました。
──刺す女を演じた水川あさみさんの美しさが際立っています。萱島と指に絡めた蜂蜜をなめ合うシーンはファンが悶絶してしまいそうなくらい色気がありました。
水川さんがセミを食べるシーンがありますが、グロテスクにならず、美しく撮れてよかったと思っています。

萱島と蜂蜜をなめ合うシーンに関しては、金色のライティングで蜂蜜が光るようにして、黄昏れた風景にすることには拘りましたが、お芝居に関してはお二人があの雰囲気を作り上げてくれました。
──これから作品をご覧になる方に向けてひとことお願いします。
人間とって大事なことだけでなく、“人間以外の生き物にとって大事なことは何なのか”もみんなで考えながら生きていくと世界がよくなっていき、その結果、人間が絶滅することが避けられるのではないかと思います。そういうメッセージは込めてありますが、まずはこの作品を楽しんで見ていただきたいと思います。サスペンス的、スリラー的な部分もありますが、ダンスパフォーマンスあり、アクションありと映画ならではのいろんな要素が満載です。竹野内さん、山田さんだけでなく、女性たちもみな魅力的に撮りました。ぜひ劇場で雨の音に包まれながらご覧いただければと思います。
<PROFILE>
監督: 石橋義正
1968年京都生まれ。京都市立芸術大学大学院修了。1997年公開の映画『狂わせたいの』が第8回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞。2000年に異色のTV番組「バミリオン・プレジャー・ナイト」を製作・監督。マネキン家族のドラマ「オー!マイキー」がベルリン国際映画祭に招待される等、国内外で高い評価を得る。
アーティストグループ「キュピキュピ」を主宰し、テートモダン(ロンドン)でのパフォーマンス、パレ・ド・トーキョー(パリ)での個展をはじめ、ニューヨークMoMA等、国内外の美術館での映像作品の展示、劇場でのパフォーマンス等を行い、2010年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で大規模な個展を開催。2012年には、製作・監督をした映画『ミロクローゼ』が公開された他、能や和太鼓等、伝統芸能とメディアを融合した舞台『伝統芸能バリアブル』を演出。2016年から数年にわたり日本最大の着物のファッションショー『ファッションカンタータfrom Kyoto』の演出を手がけるほか、2021年には京都市交響楽団とのコラボレーションの舞台『火の鳥』を演出する等、活動は多岐に渡る。第41回京都府文化功労賞受賞。京都市立芸術大学美術科教授。
『唄う六人の女』2023年10月27日公開
【公式】映画『唄う六人の女』予告編 2023年10月27日全国公開
www.youtube.com<STORY>
ある日突然、40年以上も会っていない父親の訃報が入り、父が遺した山を売るために生家に戻った萱島(竹野内豊)と、その土地を買いに来た開発業者の下請けの宇和島 (山田孝之) 。契約の手続きを終え、人里離れた山道を車で帰っている途中に、二人は事故に遭い気を失ってしまう……。目を覚ますと、男たちは体を縄で縛られ身動きができない。そんな彼らの前に現われたのは、この森に暮らす美しい六人の女たち。何を聞いても一切答えのない彼女たちは、彼らの前で奇妙な振る舞いを続ける。異様な地に迷い込んでしまった男たちは、この場所からの脱走を図るが……。
<STAFF&CAST>
監督:石橋義正
脚本:石橋義正、大谷洋介
出演:竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈
配給:ナカチカピクチャーズ、パルコ
© 2023「唄う六人の女」製作委員会