ロースクールで学んでいた3人が卒業後、弁護士、容疑者、死者として向き合うことで隠されていた真実が浮かび上がってくる。映画『法廷遊戯』は五十嵐律人が第62回メフィスト賞を受賞した同名小説の映画化だ。主人公の「セイギ」こと弁護士・久我清義(きよよし)役を永瀬廉、セイギの幼馴染でロースクールの同級生である織本美鈴役を杉咲花、在学中に司法試験に受かり、卒業後も大学に残り司法を研究する天才、結城馨役を北村匠海が演じる。メガホンをとった深川栄洋監督に取材を敢行。脚本開発の苦労やキャストへの演出について語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

髪型は北村匠海本人からの提案

──結城馨を演じた北村匠海さんとは「にじいろカルテ」(2021年、テレビ朝日系)、「星降る夜に」(2023年、テレビ朝日系)でご一緒されています。

今回、いちばん描かれていないのが馨です。しかし、馨という役について、北村くんと詳しい話をしていません。北村くんは描かれていないことで不安に感じるタイプではありませんから、自分が感じている馨を最大限、演じていこうとしていました。お互いに信頼関係があるので、必要なことがあれば僕が何か言ってくるだろうと思っていたのでしょう。

画像: 髪型は北村匠海本人からの提案

馨は仕掛けることが多い。仕掛けが仕掛けと見られるとか、2回目に仕掛けと気が付くのか。奥行きのあるお芝居が求められます。「今の芝居はここをこういう風にしたい」などと、仕掛ける芝居のポイントを1つ1つ確認して、企みを北村くんと共有しながらやっていました。

──北村さんの髪型がいつもと雰囲気が違いますね。

北村くんから「髪を上げてみようかと思います」と言ってきたのです。僕のイメージでは北村くんも永瀬くんと同じように、陰と陽でいえば陰のイメージがある俳優さん。ちょっと似たような印象を与えてしまうかなとクランクインする前に思っていたので、いいのでないかと思いました。

馨は人より先のことを考えていて、同級生から一目置かれる存在。頭も家柄もよさそうで、付け入る隙がない感じ。そういう押し出しの子なので、前髪の間から世界を見るのではなく、一歩進んだ凛々しさを表してみました。

──永瀬さんが演じた清義の高校時代の髪型も永瀬さんのイメージとは違いますね。

若返るときは髪を長くすることが多いのですが、そうじゃないアプローチで歳の若さというか気づきのある前を表現するにはどうしたらいいのかを永瀬くんと話しました。そのときに短い髪のウィッグを付けるのはどうだろうかと提案したところ、最初はちょっと抵抗感があったようです。しかし、ウィッグを作ってくださる方がとてもお上手で、永瀬くんに合わせて何度も調整することでその不安を解消してくれました。最終的にはヘアメイクさんとも意見を擦り合わせて、高校時代の清義を作り上げています。

──監督からご覧になった永瀬さん、杉咲さん、北村さんの俳優としての魅力や可能性についてお聞かせください。

永瀬くんは陰だと思っていたら陽の方でした。陽のお芝居で活躍している姿も見てみたいですね。例えば、福田雄一組のコメディ作品。そういう風な世界も彼ならやってのける気がします。

杉咲さんは「本当にすごい女優」と聞いていましたが、本当にすごい方でした。幼く見えて、すごくしっかりしている。しっかりしているからこそ、石橋を叩いて、叩いて渡るようなタイプだと感じました。それが時として叩かずに不用意に芝居をしてしまう瞬間や、不用意に仕事を選んでこんなものにも出てしまったという作品でも見てみたいです。

北村くんもいろんな姿を見せてくれるので、ヨーロッパでもアジアでもいいので、海外の作家性のある作品にも出たらいいのではないかと思っています。

3人とも素直で性格がいい。自分のやっていることに誇りを持っていて、必要な頑固さもある。これからの日本のエンターテインメント産業を背負って立つ3人が奇跡的にこの作品で共演した夢のような瞬間だったのではないかと思っています。

3人は出自が違うので、この先、求めていくものも求められるもの違うでしょう。しかし、それ以上に振れ幅を持って活躍できる人たちだと思っています。インディペンデント系や作家性のある映画、アングラな舞台、華やかなステージなども含め、1つのところに留まらず、フィールドを跨いで活躍してほしい。いろんな世界に顔を突っ込んで、もっともっと成長してくれると映画界が華やぐと思います。

<PROFILE>
深川栄洋

1976年9月9日生まれ。千葉県出身。専門学校東京ビジュアルアーツ(映像学科映画演出専攻)在学中から自主制作映画を監督。卒業制作『全力ボンバイエ!』が第2回京都学生映画祭入選、第2回水戸短編映像祭水戸市長賞を受賞し、短編映画館トリウッドのオープニング作品として公開される。2004年に『自転少年』で商業監督デビューし、2005年に『狼少女』で劇場用長編映画監督デビュー。2009年『60歳のラブレター』のスマッシュヒットで一躍脚光を浴び、以降、コンスタントに話題作を発表し続けている。

主な監督作に『白夜行』(2011)、『神様のカルテ』シリーズ(2011、2014)、『トワイライト ささらさや』(2014)、『そらのレストラン』(2019)、『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』(2020)、『桜のような僕の恋人』(Netflix/2022)。「にじいろカルテ」(EX/2021)、「星降る夜に」(EX/2023)などドラマ作品も多く手掛ける。

『法廷遊戯』全国公開中

画像: 映画『法廷遊戯』超予告(11.10公開) youtu.be

映画『法廷遊戯』超予告(11.10公開)

youtu.be

<STORY>
清義(永瀬廉)、美鈴(杉咲花)、馨(北村匠海)の3人は名門・法都大学のロースクールの同級生。彼らのクラスでは、「無辜(むこ)ゲーム」と呼ばれる模擬裁判が日々繰り広げられていた。このゲームは在学中に司法試験に合格した学校イチの秀才である馨が主宰者で、クラスで起こった事件の罪を申し立てたい生徒が原告になる。残りのクラスメイトたちも参加者として集まって開かれていた。

ある日、清義が16歳のときに殺人未遂の疑いで逮捕され過去を暴く内容のビラがクラスに撒かれた。清義は告発者へ異議を申し立てるため、幼馴染であり現場近くに座っていた美鈴を弁護人に指名し、「無辜ゲーム」を申請した。

やがてロースクール卒業し、清義は弁護士に、馨は大学に残って法学の研究者と別々の道を歩んでいた。久しぶりに「無辜ゲーム」を開くと馨に呼び出された清義が会場にしていた学校の裏の洞窟に向かうと、そこには馨の死体の隣でナイフを手に放心する美鈴がいた。美鈴は清義に「お願い、私を弁護して」と話し、その後は一切口を聞かなくなってしまった。ただの模擬裁判だったはずの「無辜ゲーム」に隠されていた衝撃の事実とは…。

<STAFF&CAST>
監督:深川栄洋
原作:五十嵐律人『法廷遊戯』(講談社刊)
脚本:松田沙也
主題歌:King & Prince「愛し生きること」(UNIVERSAL MUSIC)
出演:永瀬廉(King & Prince)、杉咲花、北村匠海
戸塚純貴、黒沢あすか、倉野章子、やべけんじ、タモト清嵐
柄本明、生瀬勝久、筒井道隆、大森南朋

配給:東映
©五十嵐律人/講談社 ©2023「法廷遊戯」製作委員会

公式サイト:https://houteiyugi-movie.jp/

This article is a sponsored article by
''.