中学で合唱部の部長を務める岡聡実はある日、ヤクザの若頭補佐・成田狂児からカラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になることを避けるためだという。嫌々引き受けた聡実だったが、次第に2人の間には奇妙な絆が育まれていく。映画『カラオケ行こ!』は和山やまの同名人気コミックを綾野剛主演で実写化したハートウォーミングな作品である。メガホンを取った山下敦弘監督に綾野剛といかにして作品を作っていったのかを聞いた。(取材・文/ほりきみき)

受けの役どころを演じる綾野剛を見てみたかった

──成田狂児を綾野剛さんが演じることは早い段階で決まっていたのですね。

俺が企画に加わったときにはすでに綾野くんが狂児を演じることは決まっていました。

ただ、この話の主役は聡実くん。綾野くんは主演ではありますが、彼が演じる狂児は受けの役どころです。そういう綾野くんを見てみたいというか、綾野くんが受けに回るというのは絶対に面白くなると思ったのです。実はそれも今回、お引き受けした理由でした。

画像: (左から)聡実(齋藤 潤)、狂児(綾野 剛)

(左から)聡実(齋藤 潤)、狂児(綾野 剛)

──綾野さんとは事前にどのような話をされましたか。

最近、リハーサルってあまりやっていなかったのですが、今回は関西弁というハードルもありましたし、齋藤(潤)くんのレッスンになるんじゃないかということもあって、綾野くんと齋藤くんと3人で何度もリハーサルをやりました。ですから3人で話す時間はたっぷりありましたね。

綾野くんとは狂児を作るというよりも、聡実くんをどう見せていくかを俺から綾野くんに相談する感じでした。結果的に、俺と綾野くんで聡実というキャラクターを作っていった気がします。

──狂児と聡実はカラオケボックスでのシーンが多く、狭い空間で2人をどう見せるかは苦労されたのではありませんか。

カラオケボックスは特殊な空間ではありますが、狭いので変化をつけにくい。確かに初めはそこで悩みましたが、リハーサルを重ねていくうちに、2人が距離を縮めていく様子が描ければ、ずっとカラオケボックスでも大丈夫なんじゃないかと思うようになりました。

画像: 受けの役どころを演じる綾野剛を見てみたかった

──カラオケボックスで聡実が肘をついてチャーハンを食べていると、狂児がそのことを指摘します。聡実が反抗的に直さずにいると、狂児は何度も指摘しますが、そのときの狂児の表情から聡実を大事に思っている気持ちが伝わってきます。

また、このことから狂児は家族で食卓を囲む家庭で育ち、愛情をもって育てられたことが察せられ、狂児の役どころに深みを感じました。

原作では「聡実くん、肘ついて食うなよ」と1回いうだけですが、何回も言うのは現場で綾野くんがアドリブでやったことです。「俺の演出です」と言いたいところですけれどね(笑)。

綾野くんはカットを掛けるまで芝居を続けてくれる人なので、アドリブは何カ所もありました。屋上で「刺さってしもうたわ。抜いて」というのも確か綾野くんのアドリブです。もう、どこがシナリオにあって、どこはアドリブなのか、俺も忘れてしまったくらいです。

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