ベストセラー作家となった男が最愛の人を蔑ろにした翌朝、彼女と出会っておらず、しかも、ふたりの立場が逆転した〈もう一つの世界〉に放り出されてしまう。『知らないカノジョ』は中島健人が主演を務め、映画初出演のシンガーソングライターのmiletと共演したファンタジックラブストーリーである。公開を前に三木孝浩監督にインタビューを敢行。キャストとの役作りや演出、ロケーション選びなどについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

80~90年代のハリウッド映画のラブストーリーのテイストで


──ミナミは学生、専業主婦、人気シンガーソングライターの違いを衣装でも感じます。miletさんにとって役作りをする際に役だったのではないでしょうか。

スタイリストの望月恵さんはリアリティよりも何かちょっとデフォルメされた世界観をスタイリングでさり気なく差し込むのが抜群にお上手です。『陽だまりの彼女』(2013)や『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)といったファンタジックなラブストーリーの作品でヒロインのスタイリングが素晴らしくて、僕はとても好きですね。

売れっ子アーティストはmiletさんご自身に近いと思いますが、そうでないときのキャラクターについては、衣装の醸し出す空気感がmiletさんの役作りに役立ったと思います。


──監督から望月さんにどのようなオーダーされたのでしょうか。

この作品に限らず、映画を撮るときは、具体というよりも自分が目指したい映画のタイトルをスタッフのみなさんに伝えるようにしています。今回はちょっとポップなイメージで、ワクワクして楽しいけれど、切ないところもある作品にしたかったので、全体的なテイストが80~90年代のハリウッド映画のラブストーリーだと伝えました。スタイリングも大学生のときは古着っぽくしてもらいました。


──小物としてのメガネの使い方も素敵でした。

オリジナルのヒロインがメガネをしていたので、そのオマージュもあるのですが、ハリウッド映画のラブストーリーで、ヒロインは大抵メガネを掛けています(笑)。多くの人は彼女の可愛らしさに気づいていないのだけれど、ちゃんと見ている人は気付いているという感じがとても好みなので、メガネは必需品でした。miletさんがまたよく似合っていましたね。

画像1: 80~90年代のハリウッド映画のラブストーリーのテイストで


── 一方でリクの衣装はあまり変化がありませんね。

人気小説家になったリクがもう一つの世界に行くと雑誌編集者になっています。しかし、気持ちは前の世界のまま。衣装を変えると気持ちがリフレッシュされたように見えてしまうので、同じ衣装にして、前の世界を引きずっている感じを出しました。もう一つの世界に行ってからは2ポーズくらいにしています。


──その衣装のせいでしょうか、中島さんの普段のオーラが封印されていました。

タイトな衣装にするとスタイリッシュに見えてしまいますから、望月さんがダボっとした長めのコートを選んで、シルエットを計算してくれていました。

でも、ちょっと不器用だったり、失敗して後悔したりするリクのキャラクター感を健人くんも常に意識してくれていたと思います。

健人くんは自分のモードチェンジのスイッチを持っているのでしょう。miletさんも「中島さんは現場ではずっとリクでした」と言っていました。取材などで一緒になったときに中島健人に戻っているのを見て、むしろ驚いていましたね。

画像2: 80~90年代のハリウッド映画のラブストーリーのテイストで

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