中村倫也と神木隆之介、パブリックイメージを覆す配役の妙
──三島玲央を中村倫也さん、本庄絆を神木隆之介さんが演じられています。役柄を入れ替えても成立はするけれど、エンターテインメントとしての面白さを考えて、この配役になったと聞きました。
お二人は、セリフ以外の部分での表現力が非常に卓越しています。多くの場数を踏んでこられたからこその説得力があり、いわゆる「顔面力」と言いますか(笑)、役者としての佇まいそのものに力がある。本作は、意外にもセリフのない時間が長い作品なのですが、そうした「静」の時間であっても、スクリーンを持たせることができる。その確信があったことが、まず大きな前提としてありました。
その上で、どちらの配役がお二人にとって、より「新鮮な見え方」になるかを検討しました。三島はどちらかと言えば等身大の安定したキャラクター、対する本庄はミステリアスな犯人役のような立ち位置です。
おそらく、パブリックイメージに忠実にいくならば、ミステリアスな役どころを中村さんが演じる方が、観客としても腑に落ちやすいのかもしれません。ですが、あえてそこを逆転させることで、すでにお茶の間に浸透しているお二人の「まだ誰も見たことがない側面」を引き出せるのではないかと考えました。
「この二人が、この役をやるの?」という驚きや、どう転ぶかわからないワクワク感。そうした観客の期待を裏切るようなフックこそが、エンターテインメントとしての重要な面白さになる。そうしたプロデューサーの優れた判断を信じて、今回の配役へと踏み切りました。

──中村さん演じる三島の「論理的でストイックな絶対王者感」を出すために、現場で演出したことはありますか。
実は、三島役の中村さんについて、僕からお伝えしたのは、「三島らしくあってください」という言葉くらい。演出らしい演出はしていないんです。まずは中村さんがどう演じられるのか、僕自身が一番初めに見せてもらうという形でした。
たとえば冒頭で「シンボリルドルフ」と答えるシーンがありますよね。少し溜めて、緊張と集中が入り混じったような独特の表情。あれは僕が指示したものではなく、中村さんご自身が、極限の緊張と思考の狭間で模索して見せてくれたものです。「どこを見ているのかは分からないけれど、脳内で何かが動いているんだろうな」と感じさせる、あの繊細な表情こそが三島そのものでした。中村さんにとっては非常に過酷な現場だったのではないでしょうか。
実際に、中村さんは「すごく大変だ」と仰っていましたね。解答席に座っているだけで、大きな動きもなければセリフもない。その制約の中で何かを表現し続けなければならないので、「とにかく疲れる、疲れる」と、エネルギーを激しく消耗しながら演じてくださっていました。

