カバー画像:Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』独占配信中
【助演男優賞部門】スミット=マクフィーとコッツァーの一騎打ち
助演男優賞部門候補
- トロイ・コッツァー(『コーダ あいのうた』)
- ジェシー・プレモンス(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- コディ・スミット=マクフィー(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- J・K・シモンズ(『愛すべき夫妻の秘密』)
- キアラン・ハインズ(『ベルファスト』)
一応の本命は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で得体のしれない本性を抱えて主人公の牧場主を魅了する少年を熱演したコディ・スミット=マクフィーと見られていた。ゴールデングローブ賞やニューヨーク映画批評家協会賞で受賞し、この部門をリードしてきたが、そこに流れを変えそうな大きなライバルが出現。それは全米俳優協会賞でこの部門を受賞した『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーだ。
聾者一家の父親を時に快活に時にユーモラスに演じ、聾者であるとかないとかいう次元を超えて娘の才能を伸ばすために限りない愛情を示す父の姿は、たしかに多様性を求める今のアカデミー賞に向いているかもしれない。スミット=マクフィーの役もある意味LGBTQを示唆するもので、どちらがオスカー像を手にするか?という興味に移行しつつある。
『パワー…』からはもう一人、主人公の弟を演じるジェシー・プレモンスも初ノミネート。最近『アイリッシュマン』『ヴァイス』などオスカー絡みの秀作に脇役で出演してきたが、今後もっと目立つ存在になってきそうな成長株だ。
他の二人は大ベテランだが、『ベルファスト』で愛すべきおじいちゃんを演じたキアラン・ハインズはこれが初ノミネートで今回の穴かもしれない。もう一人は『セッション』でこの部門を受賞しているJ・K・シモンズが『愛すべき夫妻の秘密』で再度候補に。『アイ・ラブ・ルーシー』でアーナズ&ボール夫妻と共演した俳優ウィリアム・フローリーを好演した。
【助演女優賞部門】アリアナ・デボースが一歩リード中
助演女優賞候補
- キルステン・ダンスト(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- ジュディ・デンチ(『ベルファスト』)
- ジェシー・バックリー(『ロスト・ドーター』)
- アリアナ・デボース(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
- アーンジャニュー・エリス(『ドリームプラン』)
ここでの本命は『ウエスト・サイド・ストーリー』のアニータ役アリアナ・デボースだ。ブロードウェイ出身の実力を発揮し、ゴールデングローブ賞ほか主要な賞をすでに獲得。このアニータ役は1961年版で演じたリタ・モレノも助演賞を受賞しており、アリアナが受賞すればリタに次いで2人目のラティーナ・オスカー女優となる。オスカーの求める多様性にも相応しい。
対抗に挙げられるのは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のキルステン・ダンストか。子役時代から活躍してきた長いキャリアを持つ彼女だが、オスカー候補は初。一児を連れて大牧場に嫁いできた女性が次第に酒に溺れ精神を病んでいく様子を体当たりで演じ、賞レース開始のころはこの部門をリードした。
主演男優賞本命のウィル・スミスと渡り合った『ドリームプラン』のアーンジャニュー・エリスも初候補。スミス演じる破天荒な男の妻役で、一家を愛情で支える姿が頼もしい。約30年の芸歴を持ち、ようやく実力を認められた形だ。近年売れっ子のアイルランド女優ジェシー・バックリーも『ロスト・ドーター』で初候補に。主演賞候補のオリヴィア・コールマンの回想シーンで若き日の主人公の微妙な女性心理を演じる。
もう一人は英国の大ベテラン、ジュディ・デンチ。『ベルファスト』で主人公一家のおばあちゃんを好演。どんな映画でも存在感を示す演技力はさすがとしか言いようがない。これが8度目のオスカー候補(うち助演賞受賞一回)となる。