海上自衛隊の潜水艦が沈没し、艦長の海江田四郎を含む全乗組員の死亡が報道される。しかし乗員はみな生存していた。事故は日米政府が極秘に建造した高性能原子力潜水艦「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だった。映画『沈黙の艦隊』はかわぐちかいじによる同名人気コミックの映画化。主演の大沢たかおがプロデュースも手掛けている。メガホンをとったのは、『ハケンアニメ!』の吉野耕平監督。原作ファンという吉野監督がいかにしてこの作品に挑んだのか、話を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

シーバットはフィクションとノンフィクションの懸け橋

──この作品は基本的に潜水艦の中のシーンで、ほかも日米の政府の会議室など密室でのシーンが多いので、画に緩急をつけるのが大変だったのではありませんか。

おっしゃる通り、登場人物は座っていることが多い。しかも、いろんなところで戦いが起きますが、どれも空間がバラバラなので、お互いの姿が見えない。それでもお互いに感情が激しく交差している感じをどう出すか。そこに工夫が必要でした。敵艦は向こうの方角にいるとか、海江田がここを見ているといった基本的な意識の動き、目の動きを作って、何とか向かい合っている雰囲気を作ってみました。

あとはやっぱり座り位置ですね。この人とこの人の表情はセットにするとか、座っている人の手前の人は立たせるとかして、感情やピンチ度合いを表現しました。海江田で動きが作れない分、海江田以外の人で何とか状況を表現するよう、常に考えていました。

──シーバットが起動するとき、モニターの画面がぱっぱっぱと続けて明るくなっていくことで動きが感じられました。

潜水艦は窓がないので、海が見えているわけではありません。乗り物としての変化が作り辛かったですね。シーバットにはモニターがたくさんついていますし、実際の潜水艦でも時間や状況でライティングが変わるので、ライトやモニターといった光表現の変化で、“今、戦闘中でピンチなんだ”とか、“少し落ち着いたけれど気を緩められない”といったことを割と細かく変化を作っていきました。

画像: シーバットはフィクションとノンフィクションの懸け橋

──シーバットの艦内は静かで、神秘的な雰囲気を感じました。

シーバットは誰にも頼れないし、誰にも理解されない中を突き進んでいく艦です。シンボリックに見せるためにあえて左右対称にし、今あるものから少し未来のものであるという感じにしたかったので、現実の潜水艦からは飛躍させて作っています。厳かで孤独に旅立っていく宇宙船のような空気感もあります。

シーバットはフィクションとノンフィクションの懸け橋になってくれるものなので、そこをどう魅力的に演出するかということに心を配りました。

──これからご覧になる方に向けてひとことお願いします。

登場人物たちのほとんどが自衛官、軍人、政府の人。どちらかというと感情を押し殺さなければならない立場ですが、そういう人たちがはみ出させる感情、にじみ出る感情を捉えて精一杯演出したつもりです。人々の秘められた感情を存分に楽しんでいただければと思います

<PROFILE>
監督:吉野耕平

1979年生まれ。大阪府出身。大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻終了。『夜の話』(00)がPFFにて審査員特別賞を受賞。『日曜大工のすすめ』(11)が第16回釜山国際映画祭ショートフィルムスペシャルメンション受賞。CGクリエイターとして『君の名は。』(16)に参加した後、『水曜日が消えた』(20)で劇場長編監督デビュー。次の世代を担う映像クリエイター選出プロジェクト「映像作家100人 2019」にも選ばれている。『ハケンアニメ!』(22)では日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。本作が長編映画監督3作目となる。

『沈黙の艦隊』2023年9月29日(金)全国東宝系にてロードショー

画像: 【最新映像】映画『沈黙の艦隊』ファイナルトレーラー|9月29日(金)全国劇場公開! www.youtube.com

【最新映像】映画『沈黙の艦隊』ファイナルトレーラー|9月29日(金)全国劇場公開!

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<STORY>
日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。だが実は、乗員は無事生存していた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の操艦を誇る海江田であった。
ところが、海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した――。
やまとを核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。アメリカより先にやまとを捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦「たつなみ」。その艦長である深町は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた……。
大義か、反逆か。日米政府、海上自衛隊、米海軍までをも運命の荒波に呑みこむ、海江田四郎の目的とは――?

<STAFF&CAST>
原作:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社「モーニング」)
監督:吉野耕平
脚本:高井光(※「高」表記は はしごだか になります)
音楽:池頼広
主題歌:Ado「DIGNITY」(ユニバーサル ミュージック) /楽曲提供:B’z
出演: 大沢たかお
玉木宏 上戸彩
ユースケ・サンタマリア 中村倫也
中村蒼 松岡広大 前原滉
水川あさみ
岡本多緒 手塚とおる 酒向芳 笹野高史
アレクス・ポーノヴィッチ リック・アムスバリー
橋爪功 夏川結衣
江口洋介
配給:東宝
©かわぐちかいじ/講談社
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公式サイト:https://silent-service.jp/

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