海上自衛隊の潜水艦が沈没し、艦長の海江田四郎を含む全乗組員の死亡が報道される。しかし乗員はみな生存していた。事故は日米政府が極秘に建造した高性能原子力潜水艦「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だった。映画『沈黙の艦隊』はかわぐちかいじによる同名人気コミックの映画化。主演の大沢たかおがプロデュースも手掛けている。メガホンをとったのは、『ハケンアニメ!』の吉野耕平監督。原作ファンという吉野監督がいかにしてこの作品に挑んだのか、話を聞いた。(取材・文/ほりきみき)
海江田と深町の話に重点を置く
──監督のオファーを受けたときのお気持ちからお聞かせください。
ものすごい人気のある作品ですし、僕自身が学生時代、夢中になって読んでいました。しかも、読んで人生変わったという人もいるほどの作品ですから、ファンの方それぞれが思い浮かべているものがある中で実写化に挑むのは、かなりのプレッシャーでした。同時に、誰かがやるのなら自分がやってみたい。そちらの気持ちが少しだけ勝って、監督を引き受けさせていただきました。
──原作者のかわぐちかいじ氏が製作報告会見で「テーマとスケールにおいて、絶対に実写化できないという自信があった」とおっしゃるほどの作品ですね。
少しでも実写に関わったことのある人間なら、これを映画として形にするのに必要なエネルギーは途方もなく大きいことはすぐにわかります。ただ、オファーされた時点で、脚本の初稿があったので、この形なら自分は演出家として力を振るっていけると思いました。
──脚本を読んでどう思いましたか。
プロットは海江田と深町の話に重点が置かれていました。原作は32巻もある大作で、膨大な世界が広がっていますが、それを全部描くことはできません。映画の尺で見せるなら、2人の話に重点を置き、スタートラインはここなんだと見せ切るなら何とか戦えると思いました。