恋人を殺された岩森は怒りと絶望に苦しみ、「ペナルティループ」という何度でも復讐ができるプログラムを利用して、加害者である溝口をナイフや銃で繰り返し殺害していく。映画『ペナルティループ』は主人公が自分の意志でタイムループに入っていくという珍しいタイプの作品である。復讐を重ねることで変わりゆく岩森の心情を『市子』(2023)での熱演の記憶が新しい若葉竜也が繊細な演技で表現した。溝口を伊勢谷友介が演じたことで話題になっている。脚本も書いた荒木伸二監督に物語の着想のきっかけやキャスティング、現場の様子をうかがった。(取材・文/ほりきみき)

抜け出す系のループを超える

──愛する人を殺された主人公がループして何度も加害者を殺害するという話を思いついたきっかけから教えてください。

自分の大事な人を殺されたとき、犯人が死刑になればそれで気が済むものだろうかと中学生の頃からもやもやしていました。日本には昔、仇討ちという制度がありましたが、殺された人が生き返って殺すならわかるけれど、誰かが代わりに殺すのでいいのか。1回殺しただけで満足できるのか。いろいろ考えているうちにテクノロジーの力を借りて、何回も殺せるシステムがあったらどうだろうかと思いついたのです。

画像: 荒木伸二監督

荒木伸二監督

──ループものは主人公がループから抜けようと必死になったり、未来を変えようと奔走したりするもののうまくいかず、何度も繰り返す話であることが多いですが、この作品は主人公が失敗することなく、毎回、加害者を殺害します。ループはあくまで枠組みで、主人公が殺害を通じて加害者と奇妙な関係を育み、変わっていく姿を描いた人間ドラマだと感じました。

はい、人間ドラマです。でもそれは秘密でお願いします(笑)

ループものって、ついついその枠組みに溺れがちですが、やはり人間ドラマ、もっと言えばリアリズムに辿り着かないと私は面白いとは思えないのです。

だからそれがSFの仕掛けでも実際に乗っかった現実を想像して書く。2回、3回殺したら結構グッタリするだろうとか、精神的にボロボロになるはずだとか。身体的、感情的な部分をSFだからと端折らずに、むしろ、そういう人間らしい部分を突き詰める努力をしました。

憎んだ人を何回ぐらい殺したら救われるだろうかと考えました。その問いには最終的な答えはないのですが、恐らく数回で単純に疲れ切るだろう、嫌気が差すだろうというところまでは容易に辿り着けました。そのあたりをスタートとして、誰が何を知っているのか、どういう仕掛けになっているのか、プロデューサーや助監督、若葉(竜也)さんにも入ってもらい、エンターテイメントとしてどういうことが新しいのかを相談しながら脚本開発を進めました。

ループの形については、この作品も開発初期は抜け出す系のループで試行錯誤していました。しかしある時、そこからズボッと抜け出しました。超越しちゃいました。

──主人公の岩森淳を演じた若葉竜也さんはかなり早い段階から決まっていたのですね。キャスティングの決め手を教えてください。

基本、私は脚本段階の当て書きはしません。脚本が仕上がってからキャスティングするのがいいと思っています。ただ今回、結構早い稿の段階で、書いているとチョコチョコ若葉さんが頭の中で顔を出してくるわけです。困ったなと。で、もう名前を若葉に寄せて岩森にしました。決まる前でしたが願掛け気味に。彼は自分にとって最も感情が見えて、気持ちを移入しやすい俳優なのだと思います。それに加えて、この危なっかしい企画を一緒に楽しんでくれる予感がしていました。面識のない段階から。

画像: 岩森淳(若葉竜也)

岩森淳(若葉竜也)

──『人数の町』で取材させていただいたとき、主人公を中村倫也さんとライアン・ゴズリングで迷ったとおっしゃっていました。今回はライアン・ゴズリングと悩みませんでしたか(笑)。

今回はライアン・ゴズリングではなく、クリスチャン・ベールと迷いました(笑)。芝居バカなところが若葉さんとクリスチャン・ベールは似ていますよね。でも、岩森はクリスチャン・ベールよりも若葉竜也かなと。キアヌ・リーブスが『ジョン・ウィック』さえやってなければ、彼もよかったのですが。

──若葉さんのどの作品をご覧になって「最も感情が見えて、気持ちを移入しやすい俳優」と感じたのでしょうか。

この業界では若葉さんを知るきっかけになった作品として『葛城事件』(2016)を挙げる方が多いのですが、私は吉田大八監督の『美しい星』(2017)で若葉さんを見つけました。

乾いているのに気持ち悪い。気持ち悪いのにカッコいい。中身は一体どうなっているんだろうという強い印象が残り、この人はすごい俳優になるはずだから、いつか一緒に仕事をしたいと思っていました。

そしたら『愛がなんだ』(2019)、『あの頃。』(2021)、『街の上で』(2021)と今泉力哉監督作品で一般的にも認知されるようになり、「露出が増え、主役も張ってしまった」とちょっと焦っていました。今回、出ていただけて本当によかったです。

This article is a sponsored article by
''.